2009年12月23日水曜日

山猿でいい

毎週通っているプールには
おかしな人たちがいっぱい来る。

バタフライならぬバテフライのおじさんの
話は以前書いた。三途の川をバタフライで渡るんだ、
と豪語してる威勢のいいおっちゃんである。

このおっちゃん、泳ぎ始めた頃は息が続かず、
10数㍍泳いだだけで気息奄々。ゼーゼーと
今にも死にそうなありさまだった。

それが今はどうだ。他の泳ぎには目もくれず、
ひたすらバタフライ一本槍。精進の甲斐あってか、
かつてプール中に響き渡っていたあの断末魔の叫びは、
すっかり影をひそめた。とても70代とは思えない
勇壮な泳ぎっぷりなのである。

戦国武将、真柄十郎左右衛門直隆の子孫と称する
おっちゃんもいる。ご先祖は五尺三寸(約175㎝)の
大太刀を振り回した豪傑として有名だが、ご子孫の
真柄さんはいたって物静かな紳士。激しいインターバルにも
黙々とついてくる。実にがんばり屋なのだ。

そういえば、私の友人には歴史上の人物の子孫が
けっこういる。すごいのはロシアのニコライ2世の子孫
というのがいるし、吉田松陰の子孫(実家の杉家のだけど)もいる。
また「篤姫」で有名になった薩摩藩の家老・小松帯刀の子孫もいれば、
ついこの間は、15代将軍慶喜公の曾孫に当たる徳川慶朝さんと酒席を共にした。

私の先祖は、たぶん秩父の山猿か何かだろう。
でも山猿でいい。ご先祖にエライ人がいない分だけ気楽に生きられるからだ。
松陰なんかと比較された日には、生きた心地がしないだろう。
どうがんばったって、かないっこないもの。

それに家柄がいいとか血筋がいいとかいうけど、
それはご先祖さんが死ぬほどがんばったおかげであって、
子孫であるオレたちの手柄でも何でもない。
ご先祖に感謝するのはけっこうだが、「わが家は下々とは血統が違うざます」
などと、ふんぞり返られても困るのだ。

半分負け惜しみで言うけど、
平凡がいちばんいい。先祖が山猿でほんとうによかった。

0 件のコメント: