2010年12月30日木曜日

日系部隊への鎮魂

民放のドラマやバラエティ番組は見ないことにしている。
あの雛壇みたいなところにバカ面をさらしている〝芸ノー人〟
とか、タレントと呼ばれる軽薄才子を見ていると頭が痛くなる。

あんなアホ番組を10年20年と倦かずに作り続け、
公共電波上に垂れ流してきたテレビ局の罪科は、
いったいいつになったら問われるのだろう。

作るほうも作るほうなら、見るほうも見るほうで、
あれらのバカ番組が日本人の民度と品位をどれほど
おとしめてきたことか。

新宿の映画館で『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』
というドキュメンタリーを観た。第二次世界大戦中、日系二世たちは
父祖の祖国である日本のためではなく、その敵国であるアメリカの
ために戦った。

日米開戦以降、日系人は〝適性国民〟とされ、強制収容所に追われた。
激しい差別と財産の没収。しかし二世たちは「祖国アメリカ」に忠誠を示すため、
ヨーロッパの激戦地でめざましい戦果をあげる。
おびただしい数の死と激しい心の葛藤――僕は涙がとまらなかった。

欧州戦線で右腕を失ったダニエル・イノウエ米上院議員(国防小委員長)は、
「必要に応じて報復する態勢が整っていることを知れば、
相手は軽挙妄動することはない」と、軍備増強の大切さを説く。

外交の場では、一歩譲れば、相手は二歩三歩と踏み込んでくる。
東シナ海を「友愛の海にしましょう」などと唱える甘ちゃんなど、
老獪中国にとってはカモがネギを背負ってきたようなものだ。

その後の外交上の失点は、すべて鳩山が蒔いたタネだ。
あの焦点の定まらぬ虚ろな目をした軽薄男は、
ほとんど国賊と云っていいだろう。

古武士のような日本人は、バカ番組隆盛の日本では
とっくに払底してしまったが、アメリカや南米ブラジルの地で
かろうじて命脈を保っている。北方四島まで危うくなった今もなお、
〝♪ええじゃないか、ええじゃないか〟と浮かれ狂う本家本元のニッポン人。
ほんとに情けない国になってしまった――。

2010年12月26日日曜日

年貢も納めどき?

今年もいろんなことがあった。
良いことばかりではなかった。
むしろ良いことは少なかったような気もする。

でも家族みんなが病気やケガをせず、
ぶじに過ごしてくれたことが何より嬉しい。

今年は外国人の出入りが激しい年でもあった。
来年の正月明けには上海生まれの中国人留学生(female)
を預かる予定だ。

台湾系のドイツ人留学生が泊まったときには、
さんざん大陸の中国人の悪口を言っていた。
寮にしろアパートにしろ、彼女らとルームシェアする
なんて考えられない、とまで言っていた。

尖閣諸島沖の問題やレアメタルの問題。
近年、中国がいくぶん横暴さを増してきたというのは、
近隣諸国が等しく思うところで、日本人だけが中国嫌い、
というわけではないのだろうけど、中国人留学生にとっては、
なにかとつらい年であったにちがいない。

僕も中国嫌い(共産党独裁政権がきらいなのです)の急先鋒だから、
つい中国人に対しても辛口になってしまうのだけれど、
お預かりする以上、気持ちよく過ごしてもらいたいので、
変にナショナリスティックな思いは封印しておくつもりだ。

だからテレビで中国関連の不都合なニュースが流れたら、
ブラックアウトみたいに画面をバッと消す(中国当局はよくやる)、
な~んて、はしたないことはやらない(と思う)。

まあ、それにしても、異人さんたちが出たり入ったりするというのは、
なかなか面白いものだ。どの子にも「お父さん、お母さん」
と呼ばせているので、自分たちの娘が一挙に増えたような気がする。

今日は泳ぎ納めと投げ納め(キャッチボール)の日でもあった。
来年も元気で過ごせますように。

2010年12月22日水曜日

Don't disturb!

電車内でものを食べる人間が増えている。
昨日も常磐線内で、若い娘さんがコンビニのおにぎりを
無心に頬ばっていた。隣のおじさんやおばさんは、
何か言いたげなそぶりだったけど、
あまりにあっけらかんと食べていたので、
気後れしたのか、結局何も言わずじまいだった。

うんうん、その気持ちわかるなァ。
言いたいのだけれど、言わないでおこう、という気持ち。
恥ずかしいとかそういうのではなくて、云っても、たぶんムダだろう、
というあきらめに似た気持ち。話がてんで通じないや、という
のれんに腕押しみたいな虚しい気持ち……。

以前、出張で能登へ行ったとき、車内でマグロの刺身を食べ始めた
女子高生がいた。学校帰りにコンビニで買ったのだろう、
友だちといっしょにパックを開き、しょう油とワサビをつけて
うまそうに食べている。これまたあっけらかーんとしていて、
自分がいかに不釣り合いな行為に及んでいるか、まるで気づいていない。

そもそも車内で化粧をする車内メイカーと同じく、
化粧や刺身を食う行為がひどく常識に外れた行為で、
どれほど周囲のひんしゅくを買っているか、
まるで気づいていないのだから、むしろそっちのほうに驚いてしまう。

彼ら彼女らにとっては、車内はプライベートな化粧室であり、
食堂であり、時には寝室となる。つまり形こそ違うが、
他者の存在を受け入れようとしない意味において、
これらの行為は立派な「ひきこもり」だ。
おそらく同じ穴のムジナなのだろう。

昔なら「親の顔が見たいもんだ」といわれたら、
顔から火が出るほど恥ずかしく思ったものだが、
今は、その親も隣であんパンを囓っていたりする。

つい最近まで、僕はこの手の不心得者を見ると、
お節介にも説教のひとつくらい垂れたものだが、
今は、その気力が失せてしまった。衆寡敵せず。
徒労感だけが虚しく残る。

さすがに隣でカップ麺なんぞをすすられたら、
「どう、おいしい? 次は日清のラ王にするといいよ。あれ、おいしいものね」
な~んてやさしくアドバイスができたらいいと思うんだけど、たぶん、
「てめえこのアホんだら、ここは食堂車じゃねえぞ。なに、とち狂ってんだ!」
と髪(だいぶ薄くなってるけど)を逆立てお上品な啖呵を繰り出すに決まってる。
これじゃかえって周囲のひんしゅくを買ってしまう。

それにしても、日本が「恥の文化」だなんて、いったい誰が言ったんだ。
恥を知れ、恥を!

2010年12月18日土曜日

朝には紅顔ありて

プールにはいろんな人が来る。
健康維持のために通っている人がほとんどだが、
なかには必死にリハビリに励んでいる人もいる。

Aさんは50歳の時に脳卒中で倒れ、片半身がマヒしてしまった。
以来13年間、プールの片隅で、黙々とリハビリをつづけている。
その一心不乱に打ち込む姿は、ちょっぴり胸を打つところがある。

「医者は言うんですよ、もう治らないって……。でもね、少しでも
動かす努力をしないと、筋肉が石のように固まっちゃうんです」
「仕事のしすぎでした。人間、寐ないとダメですね。血圧が高く、医者から
薬の服用をうるさく言われてたんだけど……結局、守らなかった。
しょうがないですよね、自分のせいなんだから。毎日、母ちゃんに
いじめられてますよ、ハハハハ……」

表情が明るいので救われる。
僕も高血圧で、高脂血症で、甲状腺機能亢進で、PTSDで、
女性恐怖症で……と満身創痍なのだけれど、
なんとかしぶとく生きている。

還暦を間近に控えると、身体のいろんなパーツがイカレてくる。
新品に総取っ替えできれば云うことないのだけれど、
そうもいかないので、錆びついたパーツをだましだまし動かしている。

アンチエイジングといって、老いに抵抗するムキもあるようだが、
僕は自然派というより、ものぐさ印の「あるがまま主義」なので、
ムダな抵抗はしないことにしている。

髪は薄くなり、しわやシミが増え、肌もたるんでくる。
両手の甲を見れば、血管が浮き出ている。
(ああ、俺も年をとったな……)と思う。

蓮如上人の白骨の御文章にはこうある。
《朝には紅顔ありて、夕べには白骨となれる身なり》
人間のはかなきことは、老少不定のさかいなれ、と。

つまり浮生夢のごとし、ってわけです。
であるからして、飲めるときに飲んでおこうと、
僕はひたすら酒を飲むのです。決して飲みたくて
飲んでるわけじゃない(ウソ)。僕もホントはつらいのです。
母ちゃん、聞いてる?

2010年12月10日金曜日

千円でべろべろ

この5年ほど、休肝日というものがない。
5時になると、夕飯の支度で台所に入るのだが、
ほぼ同時に缶ビールに口をつけている。

ビールをぐびぐびやりながら、肉を切り、野菜を刻む。
「稼ぎが少ないのに酒ばかり飲んで……」と、女房は
きっと不満に思っているにちがいないが、
そもそも自制心というものがないので、つい酒に手がのびてしまう。

ビールを飲み干すと、次はワイン、そして日本酒。
酒を切らしていると、手指こそ震えないが、
どうにも精神が落ち着かなくなる。

下町には安い飲み屋がいっぱいある。
赤羽界隈には朝7時から店を開けているところもあり、
夜勤あけの工員や消防・警察官、年金生活者などで
大いに盛りあがっている。

こうした店は俗に〝せんべろ系〟と呼ばれている。
千円札1枚でべろべろに酔っぱらえるからだ。

僕は女性恐怖症だけでなく高所恐怖症(高い店が苦手)
でもあるから、もっぱら〝せんべろ系〟が贔屓で、
とりわけホルモンには目がなく、高血圧&高脂血症のくせに、
肉食獣みたいにむしゃむしゃ喰らう。

モツにもいろいろある。珍しいのになるとオッパイ(乳房)とか
ホーデン(睾丸)、キンツル(ペニスの付け根)、ドテヤキ(直腸と肛門の間)
なんていうのもあって、わけもなく興奮してしまう。

ホルモンは見た目は悪いが、噛むほどに陰翳豊かな表情を垣間見せ、
ひとたび虜になってしまうと、抗えない魅力がある。

かつて新宿駅西口地下ガード下の通称「ションベン横丁」に、
〝屠殺場直送〟と壁一面に大書きしたホルモン屋があったという。
鮮度第一をアピールしたかったのだろうが、
その表現の直截さには思わずギョッとしてしまう。

貧乏風に吹かれながらホッピーを飲み、ホルモンを喰らい、友と語らう。
人生、至福の時と云うべきだろう。

2010年12月2日木曜日

士分の面目を思わば……

今年の流行語大賞が発表された。
「ゲゲゲの~」や「AKB48」、「女子会」、
「イクメン」などがそれだ。

流行語にうとい僕は、いまだに「AKB48」というグループ
を知らず、漫才コンビ・Wコロンの「ととのいました」
が何を指しているのかが分からない。かろうじて分かるのは、
育児に積極的な男性を指す「イクメン」と、
せいぜい「脱小沢」とか「食べるラー油」くらいなもので、
いかに現代に生きていないかを痛感する。

イクメンなどといわれると、オトコの突然変異みたいな響きがするが、
僕なんか20年来、ずっとイクメンをやってきた。もっと言えば、
布オムツにべったりついた糞尿を便器に突っ込んで、ゴシゴシ洗う
ところからやってきた。おまけにその手(少しは洗います)で、家族の
料理を作ってきた。なにを今さら、の感がする。

「食べるラー油」は、自家製のものをいろんなバージョンで
作ってみた。が、評判は今ひとつで、むしろ山形名物「だし」
のほうが食いつきはよかった。ナスやキュウリ、オクラにミョウガ
といった野菜を細かく刻み、しょう油などで味つけしたもので、
ごはんや豆腐の上にのせたり、うどんそばの薬味代わりにする。

僕はヤマイモや刻みコンブ、ニンジン、長ネギ、大根、カツオブシ
なども加え、市販のめんつゆで淡く味つけをする。いったい
どれだけのバージョンを考えたことか。いっぺん凝りはじめると、
数カ月は食卓に並ぶのが常だから、家人はそのうち、
げんなりした顔をする。しかし僕は、究極の「だし」を求め、
倦かずに野菜を刻むのだ。

数年前、『国家の品格』という本がバカ売れし、「品格」というコトバが
流行語となった。僕も調子をこいて『おやじの品格』というマジメな本
を書いたのだが、ほとんど一顧だにされなかった。

敬愛する斎藤緑雨は言っている。
《汝、士分の面目を思わば、かのはやり言葉というを耳にすとも、
決して口にするなかれ》と。

志操堅固ってことなんだろうけど、ただひたすら「面目ない」
と平謝りするしかない自分が、悲しい。