「豚肉? 大丈夫ね。餃子はだ~い好き」
こう言うのはトルコから来ている留学生のZ嬢(なにかと個人情報保護とかがうるさくてね。名前は匿します)。
ちょっと太めだが、色白美人の女子高生である。
「だって、イスラム教徒は豚肉はダメなんだろ?」
「トルコにはダメな人が多いけど、豚肉もお酒も大丈夫という人もいる。
うちはお父さんもお母さんも大丈夫」
「ヘーエ、イスラム教徒にもいろいろあるんだね」
Z嬢の父親はフリーの投資アドバイザーで母親は銀行のお偉いさん。
父親の仕事の関係でアメリカにもフランスにも住んでいたことがあるという。
母国語の他に英語とドイツ語に堪能で、日本留学のおかげで日本語も
それに加わった。去年の9月に来日し、日本の高校に通っているが、
7月半ばに帰国する。昨日は、朝からわが家へ遊びに来たのである。
聞けばラマダーン(断食)は実践するが、メッカの方向に向かって日に5回行うという
お祈りは端折っているという(おいおい、簡単に端折っちゃっていいのかよ)。
(豚肉はOKで、お祈りはしない。でもラマダーンはやる……変なムスリムだな)
イスラム教徒の信仰度合いにも濃淡があるということは知っていたが、
豚肉を平気で食べたり酒を飲んだりするムスリムがいるとは知らなかった。
「でもトルコでは豚肉食べないよ。だって売ってないもん」だって。
豚肉を食べたり酒を飲んだりするのは外国にいる時だけなのだという。ナットク。
Z嬢は原宿とか渋谷といった若者が好きそうな街が逆にきらいだ。
好きなのはどこか泥臭い池袋とか上野。とりわけ上野のアメ横が好きなのだという。
あの猥雑でアジア的な喧騒がどこかイスタンブールのバザールに似ていて懐かしい
のだという。
「AKB48」とか「嵐」といったアイドルグループにもまったく興味がないという。
あの園児のお遊戯みたいな幼稚な歌とダンスについていけないのだそうだ。
「日本ではなんでも〝カワイイ〟が一番。こればっかりだとちょっとウンザリする」
とZ嬢はキッパリ。わが家も全員〝カワイイ文化〟をとことんバカにし、
こきおろしているクチだから、Z嬢の考えには双手を挙げて賛成だ。
日本には大人の文化が育たないのかと、ボクはいつも不満なのである。
トルコ人というと、ボクたちの世代はテレビの司会などで活躍していたロイ・ジェームス
を思いうかべる。彼はいわゆる白系ロシア人で、出生名はハンナン・サファ。
民族的にはタタール人(タタールのくびき、なんて言葉があったな。それとタルタルソースも)なのだという。
Z嬢も純粋なトルコ人ではない。ブルガリア系のトルコ人なのだ。
そういえば顔立ちがどこか琴欧洲に似ている。
すしは好きだけど刺身は苦手というZ嬢。
例の糸ひき納豆もやっぱりダメみたいだ。
「粘るのはいいんだけど、あのニオイがちょっとね……」
と、ジェスチャーたっぷりにイヤイヤをする彼女。そのおどけたしぐさが可愛い。
日本人は外人と見るとむりやり納豆や梅干しを食べさせたがるが、
あの型にはまった、親日度を測るリトマス試験紙みたいな〝お・も・て・な・し〟は
もうやめにしたらどうだ。こっちは彼らの困ったような反応を勝手に面白がっているが、
彼らにしてみればずいぶん迷惑な話なのだ。
餃子をメインにした夕食を終えたあと、デザートに虎屋の羊羹を出した。
総じて豆を甘く煮た饅頭の餡とか汁粉、羊羹などは外国人に苦手とされているが、
Z嬢は逆に大好きだという。羊羹も5ミリ四方に切り分け、ひとつひとつ
噛みしめるようにつまんでいた。変なガイジンである。
かわいい太めのZ嬢。痩せっぽちの撫子(なでしこ)ばかり見慣れているせいか、
ふくよかな肉体がまことに新鮮でまぶしかった。またいっぱい話そうね。
←女房とトルコ娘のZ嬢。
持参のイブリックで本場のトルココーヒーを
いれてくれた。本人は大失敗と恐縮してたけど、
粉っぽくて?とてもおいしかったよ。アリガトね。
(顔もプライバシーの観点から下向きのものを選びました。
ああ、めんどくせー)
こう言うのはトルコから来ている留学生のZ嬢(なにかと個人情報保護とかがうるさくてね。名前は匿します)。
ちょっと太めだが、色白美人の女子高生である。
「だって、イスラム教徒は豚肉はダメなんだろ?」
「トルコにはダメな人が多いけど、豚肉もお酒も大丈夫という人もいる。
うちはお父さんもお母さんも大丈夫」
「ヘーエ、イスラム教徒にもいろいろあるんだね」
Z嬢の父親はフリーの投資アドバイザーで母親は銀行のお偉いさん。
父親の仕事の関係でアメリカにもフランスにも住んでいたことがあるという。
母国語の他に英語とドイツ語に堪能で、日本留学のおかげで日本語も
それに加わった。去年の9月に来日し、日本の高校に通っているが、
7月半ばに帰国する。昨日は、朝からわが家へ遊びに来たのである。
聞けばラマダーン(断食)は実践するが、メッカの方向に向かって日に5回行うという
お祈りは端折っているという(おいおい、簡単に端折っちゃっていいのかよ)。
(豚肉はOKで、お祈りはしない。でもラマダーンはやる……変なムスリムだな)
イスラム教徒の信仰度合いにも濃淡があるということは知っていたが、
豚肉を平気で食べたり酒を飲んだりするムスリムがいるとは知らなかった。
「でもトルコでは豚肉食べないよ。だって売ってないもん」だって。
豚肉を食べたり酒を飲んだりするのは外国にいる時だけなのだという。ナットク。
Z嬢は原宿とか渋谷といった若者が好きそうな街が逆にきらいだ。
好きなのはどこか泥臭い池袋とか上野。とりわけ上野のアメ横が好きなのだという。
あの猥雑でアジア的な喧騒がどこかイスタンブールのバザールに似ていて懐かしい
のだという。
「AKB48」とか「嵐」といったアイドルグループにもまったく興味がないという。
あの園児のお遊戯みたいな幼稚な歌とダンスについていけないのだそうだ。
「日本ではなんでも〝カワイイ〟が一番。こればっかりだとちょっとウンザリする」
とZ嬢はキッパリ。わが家も全員〝カワイイ文化〟をとことんバカにし、
こきおろしているクチだから、Z嬢の考えには双手を挙げて賛成だ。
日本には大人の文化が育たないのかと、ボクはいつも不満なのである。
トルコ人というと、ボクたちの世代はテレビの司会などで活躍していたロイ・ジェームス
を思いうかべる。彼はいわゆる白系ロシア人で、出生名はハンナン・サファ。
民族的にはタタール人(タタールのくびき、なんて言葉があったな。それとタルタルソースも)なのだという。
Z嬢も純粋なトルコ人ではない。ブルガリア系のトルコ人なのだ。
そういえば顔立ちがどこか琴欧洲に似ている。
すしは好きだけど刺身は苦手というZ嬢。
例の糸ひき納豆もやっぱりダメみたいだ。
「粘るのはいいんだけど、あのニオイがちょっとね……」
と、ジェスチャーたっぷりにイヤイヤをする彼女。そのおどけたしぐさが可愛い。
日本人は外人と見るとむりやり納豆や梅干しを食べさせたがるが、
あの型にはまった、親日度を測るリトマス試験紙みたいな〝お・も・て・な・し〟は
もうやめにしたらどうだ。こっちは彼らの困ったような反応を勝手に面白がっているが、
彼らにしてみればずいぶん迷惑な話なのだ。
餃子をメインにした夕食を終えたあと、デザートに虎屋の羊羹を出した。
総じて豆を甘く煮た饅頭の餡とか汁粉、羊羹などは外国人に苦手とされているが、
Z嬢は逆に大好きだという。羊羹も5ミリ四方に切り分け、ひとつひとつ
噛みしめるようにつまんでいた。変なガイジンである。
かわいい太めのZ嬢。痩せっぽちの撫子(なでしこ)ばかり見慣れているせいか、
ふくよかな肉体がまことに新鮮でまぶしかった。またいっぱい話そうね。
←女房とトルコ娘のZ嬢。
持参のイブリックで本場のトルココーヒーを
いれてくれた。本人は大失敗と恐縮してたけど、
粉っぽくて?とてもおいしかったよ。アリガトね。
(顔もプライバシーの観点から下向きのものを選びました。
ああ、めんどくせー)