そば打ちはけっこうしんどい。
群馬は薬師温泉で打ったそばがこれ(写真下)。
ご覧のようにひもかわみたいに太いのもあれば、
そうめんみたいに細いのもある。切り方がバラバラ。
(でもまあ、胃袋におさまっちまえばおんなしだから……)
わけのわからんことを言って、自己弁護。
それにしてもそば打ちはむずかしい。
まだ二八だからいいが、これがそば粉10割の
生粉(きこ)打ちとなると、なかなかつながってくれない。
母もうどん打ちは名人級だったけど、そば打ちは
からきしダメだった。ゆでるとブツブツ切れてしまった。
そばというと杉浦日向子さんを思い出す。漫画家であり江戸研究家、
そして無類のそば好きだった。残念ながら5年前に急逝してしまったが、
一度軽井沢の「はなれ山ガルデン」でお会いしたことがある。
その時うかがったのが、そばをたぐる時の「ズズーッ」という
〝音たて食い〟のこと。西洋人には何ともおぞましい
音に聞こえるようだが、江戸の昔からあんな景気のいい音をたてて
食べていたんだろうか? まずそのことを聞いてみた。
杉浦女史曰わく、
《それはなかったですね。江戸300年の間には、上つ方の礼儀作法
(小笠原流)が下々のレベルまで降りていて、長屋の八っつぁん、熊
さんでさえ、そばは口の中へ押し送って食べていた。そばにしろタクアンにしろ、
あからさまに音を立てるのははしたないとされてたんです》
それがまたどうして今のように「ズズーッ」が一般的になっちゃったわけ?
《明治期、寄席で噺家が擬音によってそばを食べる場面を演じたら、
その所作が庶民の間で流行しちゃった。つまり仕方噺から出たというわけ》
また江戸時代には「菊弥生(聴くや善い)」という言葉があった。
菊の時季、つまり新そばの出る晩秋から弥生(桜の時季)
にかけては、かそけきそばの香りを楽しむために、
音をたててすすり込んでもよい、という暗黙のルールがあったという。
それが日清・日露戦役以降、季節を問わず「ズズーッ」とやるようになっちゃった。
ところで、女房から聞いた話だけど、某イタリア人が来日してそば屋に入ったら、
あっちでもこっちでも「ズズーッ」の大合唱。とうとう神経がおかしくなり、
あわてて店を飛び出したんだとか。イタリア人はスパゲッティを食べる時だって、
決して音をたてないものね。
(日本人って、なんて野蛮なの!)
たぶん、そう思っただろうね。なにしろクジラとかイルカを食べちゃう
(「カンガルー肉を考えるー」参照)国民だもの、
筋金入りの野蛮人ですよ。
けどね、野蛮でもいいじゃない。他国の人間が何と言おうと、
日本ってほんとうにいい国だもの。外国へ行くとそのことが
よくわかりますよ。
こんな素朴な風景(写真上)を見ると、心が温まるでしょ?
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