2014年3月14日金曜日

おじんがしゃべるピジンな英語

英文は読めるし理解もできる。でも話せない――大多数の日本人が抱える悩みである。
ご多分にもれずボクもこの「話せない」一派で、できるのはただ単語を並べるだけだ。
それでも大概通じてしまうものだから、あまり深刻に考えずにいた。

概して日本人は外国語が苦手といわれている。
でも次の文章を読んで理解不能、という人はあるまい。

《京都先斗町の置屋の一室。天鵞絨(ビロード)友禅の壁掛けの前で、
しどけない襦袢姿で到来物のカステーラを食べている芸妓がいる。
かと思うとパンを千切って口に運ぶもの、金平糖を舐めるもの、
カルタ遊びに興ずるものと様々だ。器量もピンキリで、くわえ煙草の旦那が
「おめでとさん」と声をかけても、仕込みがわるいのか、
みなウンともスンとも言わなかった……》

上記の文は、ボクがいま即席でこさえたものだが、この中に外来語がいっぱいある。
その外来語は英語ではなくポルトガル語だ。「パン」とか「カステーラ」ならすぐわかる
だろうが、さて他にいくつあるだろう(答えは文末)。

若い頃から英語の教材はいっぱい買い込んである。一番高かったのはTBSブリタニカの
英語教材セットで、テキストやカセットテープ、ブリタニカ百科事典(英文)など一式で
40万円もした(月賦で買った)。十分活用したのかというと、さにあらず。
カセットテープなどはまだカバーをしたままのものが100本近く眠っている。
百科事典数十冊はほとんど開かれることなく、生ゴミに出されてしまった。

その他、『すぐに英語がしゃべれます』といった類の本や教材は数知れず。
英語がしゃべれるようにと投資した額はいったいどれほどになるのだろう。
それでも満足な英語はしゃべれず、いわゆるピジン英語pidgin Englishくらい
しか発せられないのだから情けない。

ピジン英語というのは、たとえば、
「ユー カム ヒアー ツモロー オーケーね?」
みたいな〝英語もどき〟のことである。これでも意味は十分通じるのだから、
恥じ入ることはないのだけれど、完璧な英語をしゃべらなくてはいけない、
という強迫観念に囚われている多くの日本人は、なかなか口を開こうとはしない。
プライドの高い高学歴のインテリとなるとなおさらだ。

しかし英語圏でない国の人たちは平気な顔して英語もどきをしゃべる。
インド人の英語なんか、巻き舌なのかゴロンゴロンと聞こえるばかりで、
何を言っているのだかサッパリで、タイ人なんかもデータdataを「ダータ」
などと発音して澄ましている。だから一生の恥などと思わず、
図々しくペラペラとまくしたてればいいのである。

TOEIC満点の次女は、まあ英語をしゃべれるのは当たり前として、
TOEIC850点の長女は、イタリア語ほどではないけれど、
いざとなればこれまたペラペラとしゃべり出す。外人慣れしてるのだ。
語彙力だけに限ればボクのほうが遙かに上だけど、
ヒアリング力、スピーキング力となるとまるっきり敵わない。

来週、長女の留学時の同級生2人(恋人同士)がイタリアから再来日する。
日光や飛騨高山などに行く予定だそうで、この間、長女が安価なホテル探しなどで
なにくれと面倒をみている。このイタリアンはどちらかというと英語が不得手なのだが、
それでも臆せずにしゃべる。今回もわが家の近くの公園でいっしょにお花見でもしようと、
計画しているのだが、きっとピジン英語をまくしたててくるだろう。
そもそも〝臆する〟とか〝恥ずかしい〟といった感覚がないのだ。

ボクは毎日ちょっとずつでも英語にふれるようにしている。
7年後の東京オリンピックには世界中から外国人がやってくる。その時までには
ペラッペラになる予定なのだ(あくまで予定です)。しかし、今までのやり方ではまったく
進歩が期待できないので、これからは実践重視に切り替える。

幸い団地の中にテキサス生まれの気のいいおばちゃんがいて、
ボクとは比較的仲がいい(いつも長々と立ち話をする。ボクもすっかり〝おばさん化〟してるのだ)。
だいぶ南部訛りのきつい英語をしゃべるけど、この際贅沢なんか言ってられない。
「Hi!  Margot !  What's up?」
次に会ったら日本語ではなく、こんな調子でやってみよう。

そうはいっても彼女は未亡人になったばかり。
また人妻を口説いてやがる、なんて近所の人に思われたら心外だしなァ(笑)。
嗚呼、英語は分かるけど、しゃべれない――この日本人に共通する悲しい現実は
すこぶる身体によくない。




←世界にはピジン英語でOKなところが
いっぱいある








※追記
次女から「dataをダータと読むのはタイ人だけじゃない。アメリカ人もダータで、デイタと
読むのはイギリス人」という指摘があった。知ったかぶりはするもんじゃないな(笑)。


※質問の答え
《京都先斗町の置屋の一室。天鵞絨(ビロード)友禅の壁掛けの前で、しどけない襦袢姿で
到来物のカステーラを食べている芸妓がいる。かと思うとパンを千切って口に運ぶもの、
金平糖を舐めるもの、カルタ遊びに興ずるものと様々だ。器量もピンキリで、くわえ煙草
旦那が「おめでとさん」と声をかけても、仕込みがわるいのか、みなウンともスンとも
言わなかった……》
以上の太字はすべてポルトガル語由来の言葉です。

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

勞さん: 一昔も前に大泉渉(当時国会議員)と渡部昇一氏(上智大学教授)の
「英語教育大論争」を読みました。”中学・高校・大学で10年間も英語を習っていても英語が喋れない、何故?”が主題でした。大泉氏は”英語教育にOral(口述)訓練の欠如”、渡部教授は”読み・書き・文法”が先”の主張でした。愚輩は渡部教授側の読み・書き・文法の意見に組しました。”英作文を瞬時に出来れば話せるはず”と考えていますが
如何でしょうか?  

匿名 さんのコメント...

昨日「英語教育大論争」に就いて投稿させて戴いた名無しの権兵衛です。文中”与する” を”組する”と書く大きな間違いを犯しました。正しい日本語を使えずに、なんで外国語を云々出来るのか赤面のいたりで、猛省、猛省あるのみです。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様

お待ちしておりました。

「英語教育大論争」の件ですが、ボクは
なんともコメントのしようがない(笑)。
だって瞬時に英作文なんか作れないし、
もちろんOralもできません。

近頃、「あの石川遼もやっているスピード・ラーニング」なんてCMをよく見るけど、
「勉強しなくてもしゃべれるようになる」
なんて大ウソだと思います。

勉強が苦手な人は何をやっても向上しません。楽して身につく芸なんてひとつもない、
と思うのですがいかがでしょう。

ボクは渡部昇一の本をけっこう読んでいます。思想信条的なものが似通っているからです。この大泉渉との論争も聞いたことがあります。

英語の達人でもある〝匿名さん〟に、
英作文の上達の仕方をご教示願いたく、
平にお願いする次第であります。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様

失礼ながら、あとでミスに気づくだけでも
大したものだと、ボクなんか思いますがね。

ボクら〝100円ライター〟の世界では、
そうした〝ちょんぼ〟は数知れず。
いちいち気にしていたら、1行たりとも
書き進められません。

ボクには、今思い出しても顔から火が出そうになる恥ずかしいミスがあります。それは
月刊誌の編集長をやっていたときに、
一般誌の有名編集長にインタビューしたこと
があって、その際に、ある言葉の読みを
間違ってしまったのです。

ミスに気づいたのは数カ月後。
女房に指摘されて気づきました。
その時の恥ずかしさと言ったら……

仮にも雑誌の編集長が、ごく基本的な
日本語を正しく読めなかった。
ボクはその一般誌の編集部の笑い物に
なっていたことでしょう。

ああ、恥ずかしい。

人生は恥と汚辱に満ちみちてますね(笑)。

匿名 さんのコメント...

英語の達人なんてとんでもありません。職業柄英語に接する機会が多かった男に過ぎません。学生の頃先生に”外国との手紙のやりとりは話すように書け”と教われたのに就職した会社の社長に”お前の英語はシカゴギャングの英語だ”と酷評され、それからは毎日苦労(英作文)の連続でした。そのおかげで英語で話す時も先ず英作して話すことになったのです。英作文となれば主語、動詞、目的語、補語をきちんと配列せねばならず5つの文型、SV(主語・動詞)、SVC(主語・動詞・補語)、SVO(主語・動詞・目的語)、SVOO(主語・動詞・目的語・目的語)SVOC(主語・動詞・目的語・補語)に自然と注意して喋る(英作文する)ようになったのです。70半ばに差し掛かっているのですが英語が好きで毎日触っています。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様

おはようございます。
そういえば匿名さんはいつも英字新聞の
切り抜きを持ち歩いていましたよね。

達人というのは日々ああやってブラッシュアップを怠らないのだな、と感心したことを
憶えています。

ボクもできるだけ英文には接するようにしているのですが、ただそれだけで、英会話が
格別上達するということはありません。

シカゴギャングの英語でも英語は英語です(笑)。少しでもギャング英語の〝ギャ〟の
字に近づけるよう、ボクもがんばります。

もしおヒマなら、
不肖の弟子に英語の手ほどきをしていただけませんか? 

お礼は時間当たり缶ビール(小です)1本。
ちょっと奮発しすぎかな(笑)。