子供の頃は、どっちかというといじめられっ子であった。
いじめっ子というのは、弱みを見せると嵩にかかって攻めてくる。
彼らの標的にならないためには、決してスキを見せないことだ。
窮鼠猫を噛む、という俗諺があるように、ネズ公だって追いつめられれば反撃する。
僕もあるとき反撃に転じ、天敵の悪太郎と取っ組み合いのケンカをおっ始めた。
そしてどういうわけか、僕はその悪たれを地べたに組み伏せてしまったのだ。
その時の誇らかな気持ちは、今でもしっかり憶えている。
実にあっけなく勝負は決まってしまったのだが、
意外にも冷静に、しかもパワフルに戦える、という事実に
まず自分自身が驚いてしまった。
それまで殴り合いの経験など一度もなかった。その後、
何度か取っ組み合いの経験を積んだが、ケンカ上手にはなれなかった。
殴り合っている間は緊張し、アドレナリンを出しまくっているから、
痛みを感じることは少ないが、終わったあとは、拳が腫れ上がり、
端正な顔?がぐちゃぐちゃになってしまう。
学んだことはいくつかある。
①顎にしろ頬骨にしろ、骨というものはおそろしく硬いこと。
②ケンカは先手必勝。常に攻めの姿勢を堅持し、迷いなく戦うこと。
③戦っているときは相手の目を見据え、終始無言を貫くこと。
④いつでも戦えるように日頃から身体を鍛えておくこと。
殴り合いを機に、いじめはなくなり、互いに一目置く間柄になった。
「ハハーン、男同士の友情というのはこんなふうに生まれるんだな」
僕は人生における至極大事な定理を学んだような気がした。
中国は図体の大きないじめっ子そのものだ。
弱みを見せるとすかさず攻めてくる。他人の家の庭にまで押し入り、
「これは俺んちの庭だ」と声高に言いだす始末。ご近所さんも、
今やいじめっ子君の言い分にも理がある、などと言い出している。
1982年3月、イギリスとアルゼンチンとの間でフォークランド諸島の
領有権をめぐって戦争が始まった。当時の英国首相サッチャーは
〝鉄の女〟の異名にたがわず、常に強硬姿勢を貫き行動した。
サッチャーは言った。
《我われが1万3000キロも彼方の南大西洋で戦ったのは、
領土やフォークランド住民ももちろん大切だったが、
それ以上に大切なことのためだった》
その大切なことというのは何か。サッチャー曰く、
それは国の「名誉」であり「国際法」であると。
法の原則が力の行使に屈服してはならない、
と彼女はあくまで原理原則を貫いた。
ああ、我がニッポンに〝鉄の男〟はいないのか。
ぐるりを見回せば目につくのは誇りも気概もない、
口先だけのフニャチン男ばかり。
真の外交を心得たしたたかな喧嘩上手はいないのか。
このままではサムライ日本の名がすたる。
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