2010年9月10日金曜日

国家と民族

南北朝鮮は同じ民族同士なのだから、いずれは統一国家になることが望ましい?
僕たちはふつう同じ民族同士なら、同じ国に住むべきだと単純に考えがちだが、
「一民族一国家」が必然であるかどうかは、それほど自明なことではない。

世界の国の数をおよそ200としよう。一方、民族の数は少数民族で約3000、
主要民族で200はあるから全部で3200くらいはある。つまり単純に均してみると、
1つの国が平均16の民族を抱えるという計算になる。アメリカやロシア、
ブラジル、中国といった国は多民族国家だ。中国は55の民族を抱えているし、
あの小国ベトナムだって50以上の民族を抱えている。

一民族が一国家を形成すべく〝民族自決〟を唱える。そして、
それを達成するためには武力行使も正当化される、というのなら、
たぶん世界中で次々と戦争が勃発するだろう。

かつて我々は、歴史教科書で「民族自決の原則」ということを教わった。
ベトナムは本来ひとつであったのに、17度線で人為的に分断されていた。
それでベトナム戦争が始まり、結果、北ベトナムが南ベトナムを崩壊させ、
民族分断の悲劇は克服された。

これぞ「民族自決の勝利」だと、1975年当時、朝日を初めとした新聞各社は
大いに褒めそやしたものだが、なぜ一民族は一国家でなければならないのか。
それほど単純な問題ではない。

2年前、わが家にホームステイしたベトナム系オーストラリア人の女性教師は、
ベトナム統一によって祖国南ベトナムを追われたボートピープルの一人だった。

そして今回、わが家の客となった台湾系ドイツ人の女子留学生は、
中国人と外省人を毛嫌いし、ルームシェアさえ峻拒している。
民族的には同じ漢族なのだから、中国が台湾を併合するのは当然、
といった考えには絶対に与しない立場だろう。いざとなったら、
私も銃をとって戦う、という面構えである。

民族自決権(個人的にはチベットは独立すべきだと思っている……)
と領土保全の原則をどう整合させていくか。なかなか難しい問題で、
我われ素人が、いくら処士横議を重ねても、気の利いた答えなど出そうにない。
沈黙するに如くはない、か?

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