南北朝鮮は同じ民族同士なのだから、いずれは統一国家になることが望ましい?
僕たちはふつう同じ民族同士なら、同じ国に住むべきだと単純に考えがちだが、
「一民族一国家」が必然であるかどうかは、それほど自明なことではない。
世界の国の数をおよそ200としよう。一方、民族の数は少数民族で約3000、
主要民族で200はあるから全部で3200くらいはある。つまり単純に均してみると、
1つの国が平均16の民族を抱えるという計算になる。アメリカやロシア、
ブラジル、中国といった国は多民族国家だ。中国は55の民族を抱えているし、
あの小国ベトナムだって50以上の民族を抱えている。
一民族が一国家を形成すべく〝民族自決〟を唱える。そして、
それを達成するためには武力行使も正当化される、というのなら、
たぶん世界中で次々と戦争が勃発するだろう。
かつて我々は、歴史教科書で「民族自決の原則」ということを教わった。
ベトナムは本来ひとつであったのに、17度線で人為的に分断されていた。
それでベトナム戦争が始まり、結果、北ベトナムが南ベトナムを崩壊させ、
民族分断の悲劇は克服された。
これぞ「民族自決の勝利」だと、1975年当時、朝日を初めとした新聞各社は
大いに褒めそやしたものだが、なぜ一民族は一国家でなければならないのか。
それほど単純な問題ではない。
2年前、わが家にホームステイしたベトナム系オーストラリア人の女性教師は、
ベトナム統一によって祖国南ベトナムを追われたボートピープルの一人だった。
そして今回、わが家の客となった台湾系ドイツ人の女子留学生は、
中国人と外省人を毛嫌いし、ルームシェアさえ峻拒している。
民族的には同じ漢族なのだから、中国が台湾を併合するのは当然、
といった考えには絶対に与しない立場だろう。いざとなったら、
私も銃をとって戦う、という面構えである。
民族自決権(個人的にはチベットは独立すべきだと思っている……)
と領土保全の原則をどう整合させていくか。なかなか難しい問題で、
我われ素人が、いくら処士横議を重ねても、気の利いた答えなど出そうにない。
沈黙するに如くはない、か?
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