雪の中、柄にもなく墓参りのはしごをした。
3月9日は父の祥月命日。
足腰の弱った老母と姉、義姉と4人で、
川越の長徳寺へお参りした。
タワシで墓石をゴシゴシ洗い、
植え込みをきれいに刈りあげ、
花を供え、お線香をあげた。
「お父さん、嬉しいねえ。みんな来てくれたよ」
母が涙声で泉下の父に呼びかけた。
父の墓のほんの近くには、私の親友も眠っている。
北朝鮮国籍のY君は小学校時代からの悪友だった。
彼にも花のお裾分け。掌を合わせたら、
(ずいぶんお見限りじゃないの)
と、sneerな笑いを浮かべた彼の顔がふっと目の前に浮かんだ。
「100年後にまた来るよ……じゃあな」
長徳寺を出た我われは、一路川島町へ。
父の実弟の墓参りである。この兄弟、何の因果か、
同じ月の同じ日に死んでしまった。
いや、この叔父だけではない。母方の叔父も3月9日が命日で、
なんと兄弟3人が、団子3兄弟みたいに数珠つなぎになり、
数年を経ずして次々と鬼籍に入ってしまったのだ。
そのため母は、「きっとお父さんが招んだんだね」
と、3月9日を「呪われた日」として恐れ、
(はやく明日になってちょうだい……)
と、毎年、首をすくめながら見送ってきた。
雪がひどくなってきた。母も「寒い、寒い」を連発するので、
今回は2軒のはしご(←赤ちょうちんじゃないッつーの)
で打ち止めにした。K叔父のところは、
去年行ったので勘弁してもらおう(←叔父貴ゴメン)。
帰りぎわに、母はジーッと私の顔を見つめた。
(最近、やたらと見つめるんだよな……猫みたいに)
猫になってしまった母に「また来るからね」と言い残し、雪の中へ駆けだした。
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