2014年9月1日月曜日

小椋佳と「うなぎパイ」

毎月、老母の介護のため浜松の実家に戻る女房が、
時々手みやげに買ってくるのが春華堂の「うなぎパイ」(←ボクはもう食べ飽きた)だ。
浜松みやげといえば「うなぎパイ」で決まり、というくらい有名で、
全国の名物土産物ランキングでも「白い恋人」(北海道)「長崎カステラ」(長崎)に次ぎ
堂々第3位の栄誉に輝いている。

この〝夜のお菓子〟と謳った「うなぎパイ」には『うなぎのじゅもん』という名の
PRソングがある。作詞・作曲は小椋佳で、小椋が第一勧銀(現みずほ銀行)の
浜松支店長をやっていた時の作品だという。春華堂が担当取引先だったもので、
おそらく義理でつくらされたものだろう。

小椋佳を知ったのは高校生の時だった。深夜のラジオから流れる甘い歌声を聴き、
いっぺんで好きになってしまった。『シクラメンのかほり』は今でもボクの十八番だし、
気分が落ち込んだりした時はギターをつま弾きながら『少しは私に愛を下さい』を歌って
自分を慰めたりする(←愛に飢えているんです)。

小椋佳は今でこそテレビなどに露出しているが、銀行員との掛け持ちをやっていた時は、
いっさいテレビに出なかった(←会社との約束だったから)。ボクはラジオを聴きながら、
声のイメージから福山雅治みたいな美男子を想像していたのだが、
実際は想像とはまるで違っていた(笑)。

《ひと目見て、さて何と言って断ろうかと思った……》
これはレコード会社のプロデューサーT氏の言葉で、やはり美少年を想像しながら、
まだ見ぬ有望株を約束の喫茶店で待っていたのだが、現れ出たのが
とても歌手という風貌ではない》男だったもので、ひどくガッカリした、
と後に語っている。T氏はまた、《当時はアイドルにしろ歌手にしろ、
必ずテレビで売るから、容貌が悪いのは問題外だった》と正直に語っている。
小椋もボロクソに言われたものである。

小椋は東大法学部卒の学業優秀な男で、ウソ偽りなく第一勧銀の頭取候補だった
浜松支店長をやっていたのは'91年からほんの2年ほどで、その後、
本店の財務サービス部長となり、'93年、歌手に専念するため退職している。

わが家には小椋佳直筆の色紙がある。女房の唯一のお宝である。
そこには《ねむの木の揺さぶり止まず逢いたき時》という歌が添えてある。
義父が末娘(ボクの女房です)のために書いてもらったものだ。

義父は当時、第一勧銀浜松支店長だった小椋とビジネス上のつき合いがあった。
義父の会社は同支店の重要取引先のひとつだったのである。

小椋はすでに2000曲を超える楽曲をつくっている。
銀行員をやっていた時、すでに〝副業〟で年間24億円も稼いでいたというから、
才能というものは恐ろしいものである。天は二物を与えず、というが、その格言は
凡夫匹夫の嘆きを鎮めるためのもの、ということがよく分かる。
天より選ばれし者は二物も三物も与えられているのである。

しかし小椋の人生は決して順風満帆ではなかった。
次男が14歳の時、突然、若年性脳梗塞で倒れ、全身不随の重体に陥ってしまう。
医者も「回復不可能」と非情な宣告。そんな中、いつものように次男を病院に見舞い、
ベッドの傍らで、ふと自作の歌を口ずさんでいたら、口もきけなかった次男が、
父親の声に合わせてかすかに歌い出した。
「空耳か?」
息子が歌をうたっていると分かった時、小椋は感極まって涙が止まらなかったという。

その奇跡的な出来事を契機に、次男はめきめき快復し、
今は日本に3人しかいないという「さつま琵琶製作師」(神田宏司)として活躍している。

胃がんの手術で、胃の4分の3を切除してしまったという小椋佳(70)。
すっかり痩せさらばえてしまったが、あの甘やかな美声は昔のままだ。
小椋は自分でこさえる歌詞についてこう語っている。
個人的なことを書けば書くほど、その詞は普遍性をもつ
この言葉から、ボクはこんなふうに考える。
domesticであればあるほどinternationalなものに近づいていくと。
名言というより普遍性をもった至言だな。




←このご面相だもんね。
《とても歌手という風貌ではない》
と言われちゃうのもわかりますよ。
そういえばマラソン解説者の増田明美
もウグイス嬢みたいに美声だったよね。
(『増田明美大っきらい』参照)

2 件のコメント:

木蘭 さんのコメント...

しまふくろうさま、こんばんは。(*^^*)
私も小椋佳さんが大好きです。

俺たちの旅、ただお前がいい、愛燦燦などなど。

歌も声も優しい方ですよね。(#^.^#)

ほんとうに昔は「歌手は顔が命」でしたね。
私自身も「歌手は顔がよくないとなれないもの」と思っていました。

でも今は「うわっ(◎_◎;)」というお顔の歌手が出てくるようになりました。

だから今の小椋佳さんを見ても、
あまり「うわっ」とは思わなくなりました。(笑)

見た目が「うわっ」の歌手でも、
みなさん歌唱力がすごかったりとっても声が綺麗だったり素敵な曲を作ったり。

不潔そうでなければ、
私も見た目はどうでもいいです~(笑)


小椋佳さんの息子さんのお話は聞いたことがありましたが、「歌の奇跡」は初めて伺いました。

あの歌声は、
耳から心の中にストンと入ってくる感じが致します。

あの優しい歌声には、
こうした奇跡を起こすことも可能なのかもしれません。

今夜は「小椋佳全集」が聞きたくなりました。

何か「奇跡」が起こるかも。(笑)

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

木蘭様
おはようございます。
いま、洗濯を終えて干し終わったところです。炊事洗濯は主夫であるボクの役割。
女房は親の介護のため里帰りしております。

さて小椋佳ですが、たしかに最近は、小椋以上に「うわっ!」とするような顔が出てきてますね。歌がうまいから、まあ赦せますが、
へただったら二重に裏切られた気持ちになって、みな怒り出すのでしょうね(笑)。

天童よしみや大川栄策、槇原敬之なんか
ヒドイものね(笑)。あれで歌がへたっぴぃだったら、詐欺師ですよ。

ボクも二枚目とはいえませんが、
大川や槇原よりはマシだと思っています(笑)。

木蘭さんも甘いのびやかなお声ですから、
歌を唄わせたらさぞ心に響くでしょうね。

「小椋佳全集」をお持ちなんですね。
〝奇跡〟が起こることを草葉の陰?から
祈っております。