2014年9月18日木曜日

スコットランドの独立ごっこ

早稲田大学在学中、次女がイギリス北東部のニューカッスル大学に留学したという話は
すでにしたが、大学を選ぶ際、スコットランドのエディンバラ大学という選択肢もあった。
どちらでもOKだったのだ。エディンバラはスコットランドの首都。
旅好きの女房は次女在英中に渡英し、母子でスコットランドをぐるっと巡ってきた。

そのスコットランドが今、分離独立するかどうかで揉めている。
そのあたりの事情は『独立ごっこ』の中でも少しふれたが、
どうやら〝ごっこ遊び〟では収まらない雲行きになってきた。

承知のようにイギリスの正式名称は「グレートブリテン、および北部アイルランド・
連合王国」というが国名が長すぎるので、、一般には連合王国(United Kingdom)と
呼ばれている。

そのUKを民族別に腑分けすると、
●イングランド=ゲルマン系のアングロ・サクソン人
●スコットランド=アイルランドから来たケルト系のスコット人
  
●北アイルランド=ケルト人
●ウェールズ=ケルト系のブリトン人(大陸に追いやられた人たちはフランスの
ブルターニュ地方に住みついた。ブルターニュとは「ブリトン人の地」の意)

ということになる。

つまり現在のイギリスは、5~6世紀、北海からやってきたゲルマン民族のアングル人と
サクソン人が先住のケルト人を追っ払って多数派となった、という国なのである。
イギリス人といっても1500年前はドイツ人だった――まず必要なのはその認識だ。

スコットランドの国土面積はUK全体の約30%、人口は8%に当たりおよそ530万人だ。
GDPは約9%を占めるに過ぎないというから、仮に独立しても深刻な影響はおよぼさない、
とする声もあるようだが、はたしてそうか。

スコットランドの独立運動が盛んになったのは北海に油田が発見された1960年代からだ。
この原油収入のほとんどを中央政府が持っていってしまい、スコットランドへの配分が少ない
というのが、彼らの大いなる不満の一つなのである。もし分離独立に成功すれば、
油田からの税収だけで530万の人口を養える、という理屈なのだが、どれだけもらえるかは
中央政府との交渉次第だから、そう簡単には事は運ばない。
それに産出量が毎年落ちてきている。北海油田だけに頼るのは危険な賭けでもある。

いずれにしろ独立問題がこじれれば、ポンドの大幅下落は避けられず、
イギリスの存在感も相対的に薄れていくだろう。
それにスコットランドにはSLBMを搭載した原潜基地を有している。
防衛戦略も大幅な変更を迫られることは必至だ。

もしスコットランドが分離独立することになると、ウェールズや北アイルランド、
さらにはスペインはカタルーニャ地方にもナショナリズムの大波が押し寄せるかもしれない。

世界には少数民族も含めると、約3000~3200の民族があるとされている。
国の数をおよそ200とし、平均すれば1国が約16の民族を抱えこむことになる。
その民族がそれぞれ〝民族自決〟を掲げ、独立運動に血道を上げるようになったら
どうなるか。安易に住民投票や国民投票が多用されると、国家や社会が不安定化し、
とても危険な事態が招来されるのである。

ドイツには《痛みのある終わりのほうが、終わらない痛みよりよい》とする諺がある。
どんな決着になるか分からないが、もともと北ドイツから渡ってきたイギリス人も、
この諺を噛みしめる日が早晩来るのかもしれない。

次女のニューカッスル大学での同窓3人が、
いまAET(アシスタント・イングリッシュ・ティーチャー)として
日本の学校で働いている。エマやダニエル、スチュワートがそれだ。
みな固唾を飲んで投票のゆくえを見守っている。




←スコットランド独立のために戦った
実在の人物ウィリアム・ウォレスの
生涯を描いた映画『ブレイブ・ハート』。
主演のメル・ギブソンがカッコよかったなァ。
今年はイングランド軍を撃破した「バノックバーンの戦い」
からちょうど700周年に当たるという。
独立派の鼻息が荒いのも当然か





 

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