わが家の冷凍冷蔵庫の中にはコーヒー豆がいっぱい詰まっている。
全国各地の名店から取り寄せたものもあれば、自分で焙いたものもある。
とにかくコーヒーが切れると、女房ともども禁断症状が出てくるのだから、
コーヒー中毒も相当年季が入ってきた。
ボクは自著も含めコーヒー関連の本をいっぱい書いてきた。主たる関心は
コーヒーに憑かれた人間たちにあって、コーヒーそのものではないのだが、
一般にはコーヒーに相当うるさい人間みたいに思われていて、いささか困惑している。
ボクの知識なんて帰山人氏の結成した〝TKY48〟というオタッキーなユニットに比べれば
子供だましみたいなもので、「くるくるぱー度」は彼らの足元にも及ばない。
くるくるぱー度を上げるためには、必死こいて自家焙煎に挑まなくてはならない。
コーヒーは自分で焙いてなんぼの世界で、焙かぬことには何事も始まらない。
フライパンでも手網でも何でもいい。とにかく自分の手で浅煎りから深煎りまで
ひととおり焙いてみる。するとコーヒー生豆の色が刻々と変化し、大きくふくらんで
いく様を目の当たりにすることになる。ここが迷宮への入口、1丁目1番地である。
どこで煎り止めるかは結局好みの問題だ。ボクは「中深煎り~深煎り」好みだから、
ついつい2ハゼまでもっていってしまう。だから浅煎りをよしとするゲイシャ種
(中国語ではもろ「藝妓」という当て字だった)はどうも苦手だ。
自分で焙煎すると、だんだん自信らしきものがついてきて「俺のコーヒーはひょっとすると……」
などと夜郎自大的な錯覚におそわれることがよくある。そうなると、たとえ教科書代わりに
『田口護の珈琲大全』を熟読玩味していたとしても、そのことは固く秘して、
読んだなどというそぶりはケほども見せない。自尊心がじゃまをするからである。
ウンウン、わかるなァ、その気持ち(笑)。自家焙煎を志す人間は妙に誇り高いのだ。
実際、『大全』のカスタマーレビューは3件しかない。増刷に次ぐ増刷で、今は
8刷り目だか9刷り目に入っていて、中国語版も出ているという超ベストセラーなのに、
レビューがたったの3件。このことは〝田口本〟がいかに密やかに、人知れず、
人目を避けてこっそりと読まれているかの証左といえる。沽券に関わるから
「愛読してま~す」なんて口が裂けても言えないのだ。
その続編とも云うべき『田口護のスペシャルティコーヒー大全』も売れゆき好調で、
いま第3弾の準備も進んでいる。それなのに、レビューはたったの2件。たぶんライバルたち
も暮夜ひそかに赤線なんぞを引っぱって「フム、なるほど、なるほど」とやっている
にちがいないのだが、そんなそぶりはおくびにも出さない。その気持ち、実によくわかる。
「レビュー? ふざけんな! そんなもん死んでも書いてやるかよ!」
田口氏は台湾や中国、韓国へ行くとアイドル並みのサイン攻めにあう。
彼の地のコーヒー業界では、今や〝神様〟みたいな存在なのだ。
そんな生き神さまの書いた第2弾が、台湾版の『おスペ大全』となってお披露目された。
題して『田口護的精品咖啡大全』。
スペシャルティコーヒーって、中国語では「精品咖啡」というらしい。
本づくりをお手伝いした清貧なるボクの名も、後ろのほうにひっそりと載っていた。
「工作人員」と書いてあった。なんだか非情なスパイになったような気分だ。
全国各地の名店から取り寄せたものもあれば、自分で焙いたものもある。
とにかくコーヒーが切れると、女房ともども禁断症状が出てくるのだから、
コーヒー中毒も相当年季が入ってきた。
ボクは自著も含めコーヒー関連の本をいっぱい書いてきた。主たる関心は
コーヒーに憑かれた人間たちにあって、コーヒーそのものではないのだが、
一般にはコーヒーに相当うるさい人間みたいに思われていて、いささか困惑している。
ボクの知識なんて帰山人氏の結成した〝TKY48〟というオタッキーなユニットに比べれば
子供だましみたいなもので、「くるくるぱー度」は彼らの足元にも及ばない。
くるくるぱー度を上げるためには、必死こいて自家焙煎に挑まなくてはならない。
コーヒーは自分で焙いてなんぼの世界で、焙かぬことには何事も始まらない。
フライパンでも手網でも何でもいい。とにかく自分の手で浅煎りから深煎りまで
ひととおり焙いてみる。するとコーヒー生豆の色が刻々と変化し、大きくふくらんで
いく様を目の当たりにすることになる。ここが迷宮への入口、1丁目1番地である。
どこで煎り止めるかは結局好みの問題だ。ボクは「中深煎り~深煎り」好みだから、
ついつい2ハゼまでもっていってしまう。だから浅煎りをよしとするゲイシャ種
(中国語ではもろ「藝妓」という当て字だった)はどうも苦手だ。
自分で焙煎すると、だんだん自信らしきものがついてきて「俺のコーヒーはひょっとすると……」
などと夜郎自大的な錯覚におそわれることがよくある。そうなると、たとえ教科書代わりに
『田口護の珈琲大全』を熟読玩味していたとしても、そのことは固く秘して、
読んだなどというそぶりはケほども見せない。自尊心がじゃまをするからである。
ウンウン、わかるなァ、その気持ち(笑)。自家焙煎を志す人間は妙に誇り高いのだ。
実際、『大全』のカスタマーレビューは3件しかない。増刷に次ぐ増刷で、今は
8刷り目だか9刷り目に入っていて、中国語版も出ているという超ベストセラーなのに、
レビューがたったの3件。このことは〝田口本〟がいかに密やかに、人知れず、
人目を避けてこっそりと読まれているかの証左といえる。沽券に関わるから
「愛読してま~す」なんて口が裂けても言えないのだ。
その続編とも云うべき『田口護のスペシャルティコーヒー大全』も売れゆき好調で、
いま第3弾の準備も進んでいる。それなのに、レビューはたったの2件。たぶんライバルたち
も暮夜ひそかに赤線なんぞを引っぱって「フム、なるほど、なるほど」とやっている
にちがいないのだが、そんなそぶりはおくびにも出さない。その気持ち、実によくわかる。
「レビュー? ふざけんな! そんなもん死んでも書いてやるかよ!」
田口氏は台湾や中国、韓国へ行くとアイドル並みのサイン攻めにあう。
彼の地のコーヒー業界では、今や〝神様〟みたいな存在なのだ。
そんな生き神さまの書いた第2弾が、台湾版の『おスペ大全』となってお披露目された。
題して『田口護的精品咖啡大全』。
スペシャルティコーヒーって、中国語では「精品咖啡」というらしい。
本づくりをお手伝いした清貧なるボクの名も、後ろのほうにひっそりと載っていた。
「工作人員」と書いてあった。なんだか非情なスパイになったような気分だ。
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