2010年12月22日水曜日

Don't disturb!

電車内でものを食べる人間が増えている。
昨日も常磐線内で、若い娘さんがコンビニのおにぎりを
無心に頬ばっていた。隣のおじさんやおばさんは、
何か言いたげなそぶりだったけど、
あまりにあっけらかんと食べていたので、
気後れしたのか、結局何も言わずじまいだった。

うんうん、その気持ちわかるなァ。
言いたいのだけれど、言わないでおこう、という気持ち。
恥ずかしいとかそういうのではなくて、云っても、たぶんムダだろう、
というあきらめに似た気持ち。話がてんで通じないや、という
のれんに腕押しみたいな虚しい気持ち……。

以前、出張で能登へ行ったとき、車内でマグロの刺身を食べ始めた
女子高生がいた。学校帰りにコンビニで買ったのだろう、
友だちといっしょにパックを開き、しょう油とワサビをつけて
うまそうに食べている。これまたあっけらかーんとしていて、
自分がいかに不釣り合いな行為に及んでいるか、まるで気づいていない。

そもそも車内で化粧をする車内メイカーと同じく、
化粧や刺身を食う行為がひどく常識に外れた行為で、
どれほど周囲のひんしゅくを買っているか、
まるで気づいていないのだから、むしろそっちのほうに驚いてしまう。

彼ら彼女らにとっては、車内はプライベートな化粧室であり、
食堂であり、時には寝室となる。つまり形こそ違うが、
他者の存在を受け入れようとしない意味において、
これらの行為は立派な「ひきこもり」だ。
おそらく同じ穴のムジナなのだろう。

昔なら「親の顔が見たいもんだ」といわれたら、
顔から火が出るほど恥ずかしく思ったものだが、
今は、その親も隣であんパンを囓っていたりする。

つい最近まで、僕はこの手の不心得者を見ると、
お節介にも説教のひとつくらい垂れたものだが、
今は、その気力が失せてしまった。衆寡敵せず。
徒労感だけが虚しく残る。

さすがに隣でカップ麺なんぞをすすられたら、
「どう、おいしい? 次は日清のラ王にするといいよ。あれ、おいしいものね」
な~んてやさしくアドバイスができたらいいと思うんだけど、たぶん、
「てめえこのアホんだら、ここは食堂車じゃねえぞ。なに、とち狂ってんだ!」
と髪(だいぶ薄くなってるけど)を逆立てお上品な啖呵を繰り出すに決まってる。
これじゃかえって周囲のひんしゅくを買ってしまう。

それにしても、日本が「恥の文化」だなんて、いったい誰が言ったんだ。
恥を知れ、恥を!

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ベネデイクト女史が恥の文化を語った頃に若い娘が電車で恥も無くむしゃむしゃ食べたり、顔を塗ったくっている風景に出くわした事が無いのでしょうね。もっともその頃は食料が欠乏し、化粧どころではなかったでしょうけれど。。。今の若者、一日の時間割が狂っているでしょう、10分早く行動を起こせば
恥をかかずに済んでいるものを、オット、
彼らは恥と思っていないのか、嗚呼!

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様
そう、10分早起きすれば、バカを満天下にさらさなくても済むのです。たぶん、親のしつけがなってないのでしょうね。

ご存じのように「躾」という字は
日本人の発明した国字で、
身のこなしが美しいという意がこめられて
います。中国でも正式にこの字を
採り入れたそうで、
「シェンメイ」と発音するのだそうです。

《躾は理屈ではない、無条件の強制である》
と福田恆存は言いました。
車内では化粧するな、刺身を食うな、
と無条件で強制させるのです。

それにしても、こんな当たり前のことを
口で言ってやらなけりゃわからんのかねえ。
ああ、情けない。