この5年ほど、休肝日というものがない。
5時になると、夕飯の支度で台所に入るのだが、
ほぼ同時に缶ビールに口をつけている。
ビールをぐびぐびやりながら、肉を切り、野菜を刻む。
「稼ぎが少ないのに酒ばかり飲んで……」と、女房は
きっと不満に思っているにちがいないが、
そもそも自制心というものがないので、つい酒に手がのびてしまう。
ビールを飲み干すと、次はワイン、そして日本酒。
酒を切らしていると、手指こそ震えないが、
どうにも精神が落ち着かなくなる。
下町には安い飲み屋がいっぱいある。
赤羽界隈には朝7時から店を開けているところもあり、
夜勤あけの工員や消防・警察官、年金生活者などで
大いに盛りあがっている。
こうした店は俗に〝せんべろ系〟と呼ばれている。
千円札1枚でべろべろに酔っぱらえるからだ。
僕は女性恐怖症だけでなく高所恐怖症(高い店が苦手)
でもあるから、もっぱら〝せんべろ系〟が贔屓で、
とりわけホルモンには目がなく、高血圧&高脂血症のくせに、
肉食獣みたいにむしゃむしゃ喰らう。
モツにもいろいろある。珍しいのになるとオッパイ(乳房)とか
ホーデン(睾丸)、キンツル(ペニスの付け根)、ドテヤキ(直腸と肛門の間)
なんていうのもあって、わけもなく興奮してしまう。
ホルモンは見た目は悪いが、噛むほどに陰翳豊かな表情を垣間見せ、
ひとたび虜になってしまうと、抗えない魅力がある。
かつて新宿駅西口地下ガード下の通称「ションベン横丁」に、
〝屠殺場直送〟と壁一面に大書きしたホルモン屋があったという。
鮮度第一をアピールしたかったのだろうが、
その表現の直截さには思わずギョッとしてしまう。
貧乏風に吹かれながらホッピーを飲み、ホルモンを喰らい、友と語らう。
人生、至福の時と云うべきだろう。
4 件のコメント:
ROUさん、
こんにちは。
昨日、某国営放送で山谷のドキュメンタリー風番組をやっていました。
昭和中期から後期の成長を静かに支えた人たちが高齢化し、随分と悲惨な事になっているという印象を受けました。
欧米の資本主義の枠組みに取り込まれてしまった以上、何かを産出し続けなければ国力は低下の一途を辿ります。
安物・粗悪品の代名詞だった「Made in Japan」が高品質の代名詞となるまで30年余の時間が必要でした。そして、その質を維持する事が、国力低下の著しい現在、暗中模索状態にあると思います。
そんな中で、やはりと言ってしまっては起こられるかもしれませんが、資本主義の恩恵を最後に受けた人から最初に期捨てられていくと言う現実が訪れているように思います。
バブルを懐かしむ一部の愚か者も見受けないではありませんが、上手く言ったもので、やはり所詮バブルだったのでしょうね。
均衡縮小の世界でしばらく状況を見続けるのも大和民族としてはやんぬるかな問い浮きもします。
失礼しました。
ビール、ワインン、日本酒と次から次へと
毎晩鯨飲すれば酒類だけでも1000キロカロリー位は摂取する事になり、加えてお得意な料理を余すことなく食する事になるとこれはモー危険レベルに達するのでは?ご用心、ご用心!
私もホルモン、煮込み、牛すじ等内臓類が
大好きです。ただ人によると内臓が好きな人は自分の内臓が弱いから補強の為に体が要求するとか本当でしょうかね?
ところでホルモンの語源ですが一説によれば”放る物”がつまって出来た言葉で、本来なら捨てるものだと言いますがどうでしょうかね。
NICKさん、こんにちは。
僕もあの番組、見ました。山谷のホスピス「きぼうのいえ」を取り上げた番組でしょ?
僕は仕事の関係で毎週山谷に行ってます。たしかに高齢化の波が押し寄せていて、ひと頃のモツ鍋みたいに煮えたぎったエネルギーは感じられないですね。
代わりに外国人のバックパッカーが安い宿のある町と云うことで、大量に入りこんでいます。今や山谷は、年老いたドヤの住人と若い外国人たちの町なんです。
ホスピスで亡くなった人たちは、果たして天国へ行けるのか? 答えはノー。だって「冥土 in Japan」だもの。おそまつ。
匿名様、ありがとう。
内臓好きは内臓が弱い、という説ですが、
ちょっと怪しいですね。だってライオン
など肉食獣は、獲った獲物の内臓から
食べますからね。
太田胃散を飲みながら狩りをしてる
ライオンなんて聞いたことないですし
……(笑)。
なぜ内臓から食べるのか。
それは正肉と比べれば旨いからです。
正肉は何日か熟成しなければ固いだけで
旨くも何ともありません。
それと内臓肉には豊富なビタミンがある。
肉食獣は内臓を食べてビタミンを補給しているのです。
ホルモンは〝放る物〟に由来する、というのは
いろんな説の中のひとつです。
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