2015年12月19日土曜日

MIRAIプログラム

昨日からスロヴァキア人の女性をあずかっている。
名前はソーニャ。172㎝の長身で、金髪の美人である。
妹のペトラは180㎝、会社を経営している父親は197㎝、
ソーニャの従兄弟は2mを超えている(2.07mでジャイアント馬場と同じ)というから、
揃って巨人ばかりの一族だ。ソーニャもがっしりした体形で、
聞けば3年間女子ラグビーをやっていたのだという。

ソーニャは日本政府肝煎りの対日理解促進プログラム「MIRAIプログラム」の
一環として初来日した。この人的交流プログラムは世界各国からおよそ5700名の
大学生や大学院生を招聘し、親日派・知日派を増やすことを目的としたもので、
今回は欧州各国から150名が参加した。スロヴァキアからは彼女だけ。国際法を
学ぶエリートで、母親も弁護士をしているという。

もちろん日本語はサッパリだから会話はすべて英語。彼女の英語はexcellentだが、
われらジジ&ババのそれはpoorそのもの。あわや無言の〝行〟が始まるのかと
思いきや、どういうわけかブロークンながらペラペラと言葉が飛び出してくる。
ソーニャもまずはひと安心といった面持ちだ。理由はよく分からないが、
たぶん〝ガイジン慣れ〟してきたからだろう。間違った英語でも少しも恥ずかしい
と思わなくなった。ここは日本だものね、なんの引け目があるものか。

昨夜のディナーはいつものように鍋。嶋中家は冬になると鍋料理ばかり食べてる、
と嫌みを言った友がいたが、たしかにわが家は棚卸しのできる鍋が好きだ。野菜が
たっぷり摂れるのもうれしい。トマーシュは高校生だったからお酒は飲ませられ
なかったが、ソーニャは23歳だから酒の相手をしてもらえる。というわけで鍋を
つつきながらビールやワインをグビグビやり、大いに盛りあがった。

今朝は全員6時に起きた。日帰りながらソーニャは名古屋へ視察に行くのだ。
見学するのはトヨタ産業技術記念館やのりたけの森といったところ。もちろん
名古屋城も見る予定だ。

今夜は娘2人も助っ人に駆けつけてくれるから、にぎやかな夕べになりそうだ。
ディナーは「手巻き寿司」の予定だが、seaweed(海藻)が苦手と言っていたから、
さてどうなることやら。一方でraw fish(生の魚)は大丈夫とも言っていたから、
ま、なんとかなるでしょう。必要以上に相手の都合に合わせない、というのももてなしの
コツだ。要はホスト側のふだんの生活を見せればいいわけで、食事だってふだん
食べているものをそのまま出せばいい。

初日、ソーニャは玄関から靴を履いたまま上がりこんでしまった。
日本では履き物を脱ぐと頭で分かってはいても、いざその場になると
コロッと忘れてしまうらしい。アメリカから次女の世話になったホストファミリー夫妻が
来日したときも、奥方のテレサはヒールを履いたまま上がりこんでしまった。
ソーニャはすぐに気がつきI'm sorryを何遍もくり返し平謝りだったが、
その懸命なしぐさが妙におかしかった。

ケチ臭いことはあまり言いたくないが、国の血税を使ったプログラムなのだから、
寝る時間を惜しんででも大いに学んでいってほしい。そして日本のことを好きに
なってほしい。
「日本はどこもきれい。道にゴミがひとつも落ちてない」
ソーニャの日本の第一印象はこれだった。アジアでは他にスリランカへ行ったことが
あるらしいが、日本はまったく別世界だとも言っていた。

彼女は疑問に思ったことはすぐ質問する。これが嬉しい。
「日本とヨーロッパはすべてが逆なような気がします」
欧州とはまったく別の文化・文明圏が地球の反対側にあるのだ、
ということを分かってもらえただけでも嬉しい。
何年後かは分からないが、彼女とはまたいつか会えるような気がしている。


←娘たちと語らうソーニャ。
かなり裕福な家のお嬢様なのか、
第一印象は「躾の良さ」だった



2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ROUさま、

よき時間が過ごせたようで重畳。

お嬢さん二人を含め、異国の方も漏れなく今の世を生きる世代ですな。
皆目の前に携帯(スマートフォンていうんだっけ?)をギャゼットとして活用されている由。

ROUさまも少しは歩み寄るべきではないかと、僭越ながら思う今日この頃でございます。

「紛失」という事態に遭遇し、計らずしも何やら最新の機種を手に入れた身としては何とも言い難いのですが、いったいこれをどのように使えばよいのか、おそらく理解していないと思われます。

弄繰り回しているうちに慣れるのかもしれませんが、行き帰りの電車の中では活字がお友達のままでいるつもりです。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様
おはようございます。

たしかにテーブルの上に、みなスマホを置いてますね。たぶん心の拠り所なんでしょう。
カミさんは辞書代わりにすぐ手に取ります。

ボクはああいったものは持ちません(持てません、が正しいかな)。
魂抜かれそうでキカイが怖いのです。

それに眼が疲れる。
最近は本を読んでいても活字を追うのに疲れ、すぐ寝入ってしまいます。

スマホが普及したら、反対に公衆電話が激減しました。
これは困ります。緊急時に連絡がとれません。
日本人はみんなスマホを持っているという前提で撤去しているのでしょうが、
持ってない人だっているのです。

便利さのカゲで失われていったものもたくさんあります。
数寄屋橋の袂でいつもすれ違いになっていた真知子と春樹。
『君の名は』の情感は、スマホの時代には味わえません。

すれ違いのない恋人同士なんて……面白くもなんともないですよ。
人生には〝ムダ〟が必要です。文化はムダから生まれるのです。