2014年5月11日日曜日

台所はオトコの砦です

わが家の朝食は各自てんでんバラバラだ。
長女は豆乳にバナナ、きな粉、黒すり胡麻などを加えたウンコのような液体を
飲んでいる。カミさんはヨーグルトにバナナ、きな粉、ハチミツを加えて練った、
やはり乳児のウンチみたいな液体をすすっている。女という生き物はなんであんな
不気味なものを愛飲するのだろう。その心底がまずわからない。

ボクはというと豆乳1杯にバナナ1本。これで昼までは十分もつ。
特に泳ぎに行く日はバナナ1本と決めていて、激しく泳ぐと心なしか
お腹周りが数センチ分へっこんだような気になる。

昼食・夕食はボクの当番だ。もうかれこれ30有余年、ボクが炊事係をつとめている。
昨晩は「母の日」のために次女が泊まりがけで帰宅しているので、数年ぶりに
「ロールキャベツ」をつくった。それとカブの甘酢漬け。最近はなぜか甘酢漬けに凝っていて、
大量につくったものが常備菜として食卓に彩りを添えている。

主夫をやっていて驚くことは、揚げ物フライものをしない主婦が多いということだ。
「レンジ回りを油で汚したくないから」というのがその大きな理由である。
いつも台所をきれいにしておきたい、という気持ちはよく理解できる。が、これでは
何のための台所かわからない。油で汚れたらきれいに拭き取ればいいだけの話で、
要は油を使っためんどうな料理を避けたい、というだけのことではないのか。
余計な脂肪を摂りたくないという女心もあるかもしれない。亭主こそ哀れである。

高脂血症のボクには油料理は御法度なのだけれど、つい油を使った料理をつくってしまう。
酒のつまみにはどうしても唐揚げや炒め物といったパンチのある料理が必要なのだ。
ボクはものの20~30分もあれば、つまみの5~6品はつくってしまうので、ひと声をかけると
意地汚い酒飲みたちがわらわらと集まってくる。連休中などは家人の留守をいいことに、
毎夜、飲めや歌えの大騒ぎだった。わが家は安上がりで居心地のいい居酒屋なのだ。

なかには女房と一緒にいるより男同士のほうが気楽でいい、などというものもいる。
夫婦関係が〝ビミョー〟なのだろう。あるいは目下失業中で、家にいても肩身が狭い、
というものもある。問題児ならぬ〝問題おやじ〟ばかりである。

わが家には職掌がら、料理書だけはいっぱいある。壁一面、、料理書に埋め尽くされている。
料理書も玉石混淆で、いいかげんな料理研究家のレシピを鵜呑みにすると、極端な味つけ
になることがある。土井善晴のレシピなどはその典型で、どの料理もやや濃いめに味がつく。
だから、こっちも塩や醤油の量を少なめに調整する。

逆に浜内千波などのレシピは淡味すぎてパンチがない。
編集者時代はよく彼女の料理スタジオに通い、取材をしたものだが、
彼女の掲げる〝ヘルシー&ビューティ・レシピ〟もゆき過ぎると
老人向け宅配弁当みたいな味になってしまう。

その点、ウー・ウェンさんの支那料理レシピはとってもバランスがいい。
シンプルでなおかつうまい。段取り要らずだから誰にでもできて、
しかも味はしっかりついている。

ボクは気に入った料理があると、そのページだけ切り取ってファイリングしてしまう。
「パパのお気に入り」というファイルがあって、三々五々、取り出しては、
評判のよかった料理を再現するのである。その中には「飲んべえに受けた料理」、
「外国人に受けた料理」「娘たちのお気に入り」といったジャンルがあって、
ファイルの数は増えるばかりである。

おふくろの味ならぬ「おやじの味」で育った娘たち。
どんな男と一緒になるのか知らないが、ちゃっかり者のふたりである。
「男は台所に入るものよ」などと、いいようにだまくらかして、
むりやり亭主に包丁を握らせてしまうにちがいない。

「女は甘やかすと図に乗る」というが、
結婚して30年、そのことを身にしみて得心した。
だから不幸か、というとそうではない。
料理は豊饒の世界である。段取りがよくないとできないので、
バカではつとまらない世界でもある。

先にカミさんがおっちんでしまっても、ボクならたくましく生きてゆける。
無聊をかこつ世のおじさんたちよ、創意工夫の宝庫でもある料理の世界へ、
いまこそ飛び込もう。そしてカラダに悪い料理をいっぱいつくろう。
つくったら腹いっぱい食べて飲んで、早く死んでしまおう。
オトコが幸せになれる道はそれしかない。




 

2 件のコメント:

田舎者 さんのコメント...

嶋中労さま

こんにちは!
今日も風が強くて思うように野良仕事が出来ない百姓です。

そんなこんなで労さまのブログにコメントを書き込んでいる
わけなのです。

何を隠そうこの百姓も日に一、二度台所に立ち賄いを作る
日々を過ごしています。

参考までに今日の朝食から
白米のご飯、キャベツと豚バラの塩麹の汁、目玉焼き
残り物のマカロニサラダ、ミニトマト、蕪とキャベツの朝漬け
こんな朝食が毎日続くのです。

ここからが本題で労さまの言われる通りに
《女は甘やかすと図に乗る》
《先にカミさんがおっちんでしまっても、ボクならたくましく生きてゆける。》
は、よく理解できます。ただ本当に自分の方が先に死にそうですがね。

結びに、日々の賄い作りも“美しき人への”一歩と考えています。

プロの目に暴かれてしまわれるインチキ百姓でした。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

田舎者様
こんばんは。

ほんに風の強い一日でありました。

朝飯のおかず、なかなかうまそうですね。
ボクなんかバナナ1本ですから、なんとも
味気ない。

膝を悪くしてから、もちろんウォーキングや
ジョギングができなくなりましたから、余計
食べてしまうと、みんな脂肪として貯えられてしまうんです。

膝がポンコツになってしまったというのは、
それこそ〝想定外〟のことでした。
一時は、「このまま歩けなくなるのか」と
目の前が真っ暗になったものです。

でも今は、リハビリを根気よく続けているおかげで、いくぶんびっこをひきますが、なんとか歩けるようになりましたし、キャッチボールもできるようになりました。

リハビリのおかげで太ももに筋肉がつき、
今まではいていたジーパンがきつきつになったくらいです。

さて、先にカミさんが逝ってしまったら、
という話ですが、もしそんなことになったら、たくましく生きてゆくどころか、気落ちして、たぶんほどなく死んでしまうでしょうね。

先に逝くべきは、もちろんボクのほうで、
女房はあとからゆっくり来ればいいのです。
男なんてものは弱いものです。