2012年10月7日日曜日

舌を噛むレストラン

昨日は外苑前の「フロリレージュ」という星付きフレンチで会食した。
メンバーはボクと女房と次女の3人。ほんとうは長女も加わるはずだったが、
例によって岩手・大船渡でのボランティアに忙しく、今回は欠席した。

娘はいい。いくつになっても話し相手になってくれるし、こうやって遊んでもくれる。
息子だとこうはいかない。親父なんかと口をきかないし、家を出たらそれっきりで、
めったに寄りつきはしない。自分がそうだったから、実によく分かる。

さてフロリレージュは超人気のフレンチで、予約は2~3ヵ月先まで埋まっている。
デフレ不況の長引く折、どこもフレンチは苦戦していると聞くが、この店だけは例外のようだ。
女房はすでに4~5回来ていて(ボクは初めて)、シェフの川手寛康氏とは馴染みの仲だ。

イケメンの川手氏は六本木の「ル・ブルギニオン」や白金台の「カンテサンス」などで
修業した新進気鋭のシェフで、女房はブルギニオンでの修業時代から見知っている。
さすがに人気店だけあって、料理はどれもうまかった(ボクにはこれしか言えない)。

気取ってると思われると困るのだが、わが家の娘たちは小さい頃からフレンチや
イタリアンに慣れ親しんでいる。誕生会や祝い事があるたびに一流どころをあちこち
連れ回したので、年齢の割には相当場数を踏んでいる。それに長女はイタリアで
暮らしたことがある。ホームステイ先では毎晩フルコースの料理(一般家庭では珍しい)で、
味も玄人はだしだったという(女房がお礼がてら訪問して確認済み。マリア・テレサよ、ありがとう)

だからといって、わが家が年がら年中うまい物を食べていると思われても困る。
ふだんは贅沢などせず、もちろん美食とは無縁で、実につましく暮らしている。
しかしパーッとやるときはケチケチせず豪華にいくのがわが家流だ。
人生にはメリハリが大切で、「ハレ」と「ケ」は明確に分けたほうがいい。
「ハレ」の日には一張羅を着込み、思いきりめかし込んでお店に繰り出すのだ。
古来より日本人は、そうやって生きてきた。

料理記者としてはベテランの女房は、フレンチとイタリアンにめっぽう強い。
雑誌に記事を書くかたわら、テレビの料理番組のアドバイザーをしたり、
2010年、横浜で開催されたAPEC(アジア・太平洋経済協力会議)などでは
21ヵ国の首脳たちの口に入れる料理を考えたメンバーの一人でもあった。
しかし献立づくりに関しては、お高くとまった外務省の高級官僚たちとことごとく衝突した。
そのためか、大会期間中の女房は不機嫌そのものだった。
「タダ飯食いの木っ端役人どもめ!」
女房の代わりに、ボクが思いきり(霞ヶ関方面に向かって)毒づいてやった。
わが家の伝統的役人嫌いには、ちゃんとした理由(わけ)がある。

ところで、冒頭のフロリレージュFlorilegeは〝詞華集〟の意だという。
フレンチレストランはどうしてこういうややこしい店名を付けたがるのだろう。
一度聞いただけでは絶対に憶えられない。

なかには「カラペティバドゥバ」とか「ラ・ブリーズ・ドゥ・ヴァレ」だとか、
「ル・シズイエム・サンス・ドゥ・オエノン」、「シニフィアン・シニフィエ」(これはパン屋)
といった、客にいじわるしているとしか思えないような店名もある。
これじゃあ料理を口にする前に、舌を噛んで死んでしまいそうだ。
何? 店名が「アオマキガミ・アカマキガミ・キマキガミ」ってか?
勝手にしろィ!

かといって「アムール」なんていう分かりやすい店名も困る。憶えやすくてありがたいが、
何やら怪しげな雰囲気が漂ってくる。昔よく通った同伴喫茶にありそうな名前だ。
それよりは、わけのわからんフランス語で煙に巻かれたほうが有難味がある?
いいかげんにしてね。



←「フロリレージュ」の肉料理。
黒い石の器がすばらしい

 

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