2012年8月17日金曜日

日本人のアイデンティティ

昨日は明るいうちから酒を飲んだ。
お相手をしてくれたのは28歳の青年S君で、長女の幼なじみでもある。
現在はフロリダ大学大学院の院生をしていて、一時帰省中だった。
研究分野は「野生動物と人間とがいかに共存するか」というもの。
将来的には大学に籍を置き、教鞭を執りたいという。

以前話したとき、「日本にもう一度オオカミを復活させたい」
なんて夢を語ってくれた。さすがにそれはむずかしいというが、
オオカミと共存できたら、と想像するだけでも楽しくなる。

話のタネは次から次へと尽きることはなかった。
竹島や尖閣のこと、オリンピックのこと、アメリカでの生活のこと、
食いものや世界のビールの話、「やっぱ日本の女性が一番」といった話、
レイシズムの話、日本人としてのアイデンティティの話……。

アメリカで生活していると、いろんなことがあるという。
もちろん不愉快なことも多い。なんといってもフロリダはアメリカ南部。
カラードに対する差別はいまだ色濃く残っている。

「よく黒人差別のことが話題にされますが、黒人は逆にアジア系を
徹底的に差別するんです。黒人警官は白人には甘いですけど、
アジア系にはとことんつらく当たる。ボクなんかよく交通違反で
捕まりましたけど、白人にはお目こぼしがあってもボクたちにはない。
意地悪な警官は決まって黒人でした。黒人対アジア系の対立の根は
とっても深いんです」とS君は嘆息する。

公民権法がとっくに成立していても、キング牧師が〝I Have a Dream〟と
訴えた黒人たちの「夢」はいまだに実現していない。S君によると、
レストランにしろ、映画館にしろ、いまだに白人席と黒人席とが、
あからさまではないにしろ分けられているので、
(ボクはいったいどっちの側に座ったらいいんだ)と悩むという。
こういう話はアパルトヘイト時代に、日本人は準白人、すなわち〝名誉白人〟
として遇された、という愚かな時代を思い起こさせる。
なにが名誉白人だ、バカにしてやがる。

I have a dream that my four children
 will one day live in a nation
where they will not be judged by the color of their skin
but by the content of their character
(私には夢があります。いつの日にか、私の幼い4人の子どもたちが、
肌の色ではなく、人格の中身によって評価されるような国に生きるという
夢なのです)(キング牧師の演説より)

外国に暮らしていると、いやでもアイデンティティ、すなわち「オレは何者なんだ?」
という自問にさいなまれる。人種のmelting potにあっては、自分を内面から支える
歴史や文化のバックボーンが不可欠なのだ。
「司馬さんの『坂の上の雲』はいいですね。秋山兄弟の骨太の生き方にはずいぶん
教えられるものがありました。外国暮らしの日本人には必携の本です」(S君)
そう、あの作品を読む読まないでは腰の据わり方がちがってくるものね。

「ボクたちのご先祖さんたちは、多くの血を流し、綱渡りをするみたいにして、
この小さな島国を護ってきたんですね」とS君はしんみり。
「そうだね。貧しいながらも、全身全霊を捧げて護ってきたんだ。
ボクは思うんだ。中学高校の、日本の悪口ばかり書かれた歴史教科書なんか要らない。
ただ『坂の上の雲』だけを読めばいい。この本だけは必修にしろと……」

でき損ないのイヤ~な隣人たちが竹島や尖閣諸島でキナ臭い動きをしている折、
日本には『坂の上の雲』というすばらしい本があるじゃないか、と改めて思う。
世界のどこに出しても恥ずかしくない、勇気と気概のある日本人がそこにいる。
そして日本には世界に誇れる第一級の歴史と文化がある。
礼儀も節度もわきまえない、李さんの国に、そんな歴史がありますか?

←登っていけば、やがては
一朶いちだ)の雲を掴めるかもしれない……。
そう思いながら明治期の日本人は
粉骨砕身がんばったという




2 件のコメント:

Nick’s Bar さんのコメント...

ROUさん、
こんにちは。

日本人のアイデンティティ?

喧嘩売るわけじゃないけど、馬鹿なこと言っちゃいけやせんぜ。

アイデンティティなんつう概念を持ち出してくることからして、すでに日本人のアイデンティティから逸脱しておりますがな。

それは彼の国に住まわれている方が、日本人である自分の説明を要する際に便宜的に規定する、まぁ、なんと言いましょうか、「ゴタク(御託宣ではありません)」みたいなもんでやんす。

それで相手が「御納得」いただければめでたしめでたし。

たとえて言うなら、脚の長さが違う椅子に座って、なんとなくバランスが悪いなぁとおもいつつ、それでもどの辺が一番据わりがいい一点を探す。そういう、あるいみ不安定などっちつかず状態で揺れ動いているのが「日本人らしい」という事なんでヤンス。

こんなこたぁ、彼の国方々、お隣も含めて到底ご理解いただけるとはおもいやせんぜ。

ゆらり揺れながらその中でまぁまぁな場所をみつけるという発想ならばこそ、「こんないい加減な国なら潰してしまえ」とも、「世界に冠たる神の国である」といきり立つ事もないわけでございまして。

お隣さんは足元(特に自分の)がぐらぐらなのが怖くてたまらないわけでして、その目先を他に向けようと涙ぐましい所作を講じておられるわけですよ。

まぁ、良いじゃないですが、どっちも先は見えてるんだから。

戦後67年の教育不全が自然消滅する100年後くらいには落ちついいてますってば。「昭和の人」から流れを汲む「昭和生まれ」の子孫たちが増えて行けばですがね。

ちったぁ増えるかなぁ?


ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

なるほどね、アイデンティティなんて
舌を噛みそうな言葉をあやつること自体が
非国民というか、非ニッポン人ってわけね。
なんとなくわかる。

それにしても戦後67年の教育不全とはねェ。
いったい何をやってきたのかね、日本人は。

100年後には落ち着くなんて、
そんな悠長なこと言ってられませんよ。
もうボクには時間がないんだもの。