2011年6月21日火曜日

禍福はあざなえる縄

禍福はあざなえる縄のごとし、という。
bad newsがあればgood newsもある。
でなけりゃ、心身ともにくたびれちゃう。

母が三途の川を前にして、迷っている。
抜き手で渡ろうか、それともバタフライにしようか。
向こう岸では父がストップウォッチを握り、
今か今かと待ちかまえている。

そんな〝お取り込み中〟に、次女の就職先がようやく決まった。
ゆとり教育世代が直面している超氷河期と呼ばれる就職戦線。
二次面接まではこぎつけても、そこでバッサリやられる。
挫折に次ぐ挫折(いい勉強になります)。
娘の顔からだんだん自信が失われていく。

思い起こせば、ボクの世代も就職難で悩まされた。
12社落ち、13社目に救われたのが某出版社。
いいかげんなもので、どんな出版物があるのか、
試験日の当日まで知らなかった。

一次面接で、編集部長のI氏が、
「君は独文科出身だけど、主にだれを研究したんだい?」
「独文学はからきしでして、ひたすら小林秀雄ばかり読んでました
その破れかぶれの一言が気に入られたのか、
面接は小林秀雄に関する質問に終始した。

12社までは皮ジャンにジーパンという大胆ないでたち
つむじ曲がりもここまで来ると愚かという外ない。
「小林秀雄とは、またずいぶん大人びてるねェ、君は」
そう、見た目は若僧でも心はすでに朽ちている。
小林秀雄に関してなら、何を聞かれても平気の平左だから、
ほとんど独演会。「こいつクセがあるけど、面白そう
といいほうに勘違いしてくれて、なんとか拾っていただいた。

A社に落ちてB社に受かる。落ちた理由、受かった理由、
どちらも想像する他ない。面接官との相性もあるだろう。

知人の一人娘は、面接に受かるための塾?にまで通ったという。
お辞儀の仕方から、歩く姿勢、言葉づかい、発声法……
何から何まですべて教え込まれるという。授業料はしめて17万円。

日本中で繰り広げられている就職狂騒劇。
藁をもつかみたいと、学生たちはみな必死の形相で駆け回る。
貴重な学生時代の一時期を、こんなことに浪費するなんて、
実に愚かでもったいない。が、改善は遅々として進まない。

「ようやく卒論に取りかかれるよ」と次女は嘆息。
そう、学生の本分は勉学だものね。

次女は幽冥界との境をさまよう祖母の耳元で
「おばあちゃん、就職先決まったよ。いっしょにお祝いしようね」
と報告。白髪頭をやさしく撫でた。


木の葉の落ちた痕を見ると、次に生える若葉の用意ができている。
古人はよく言ったものだ。
落花いずくんぞ惜しむに足らん、枝葉すでに参差(しんし)たり、と。





2 件のコメント:

Nick's Bar さんのコメント...

ROUさん、

こんにちは。


ナ○ちゃん、よかったですね。

人事(「ひとごと」ではなく「じんじ」)なので、相性の問題と、時間の問題だとおもってました。(ずーーっとそういってたでしょ?)

探し物は最後に見つかるのです。


めでたし、めでたし。


祝杯は、そっちの奢りだよね?
あ、カミサンにも言っときますんで。(笑)

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

いろいろお世話になりましたです。

娘もいい経験をしたと思います。
ボクたちも含め、あまり挫折(大げさか)
なんてしたことのない世代だからね。
十数社落ちたというのはいい経験ですよ。

この会社が〝探し物〟だったかどうかは、
わかりません。

でも、どんな会社であっても、
目の前にある仕事をとりあえず
3年くらいは必死になってやる。

〝天職〟なんてものは、
いま必死こいてやっている、
まさにその仕事のことを指すのでね、
他を探したってあるもんじゃないのです。

めでたいかどうかもわからない。
あざなえる縄だからね、人生は。

そのうち一杯やりまひょか。
お祝いじゃなくて弔い酒に
なるだろうけどね。