2016年2月21日日曜日

晴耕雨読もまた楽し

昨日、ヒマにあかせて3冊の本を読んだ。
ボクは速読家なので、日に3冊程度なら少しも苦にならない。
その3冊の読後感を少し書く。

住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち(川口マーン惠美、講談社+α新書)
イギリス在住のマークス寿子やドイツ在住のクライン孝子の本は西洋との比較のなかで、
「こんなところが日本人のダメなところ」などと、日本および日本人を上から目線で
こきおろすところがある。彼女らの論調はいつだって「日本はダメだけどイギリス、ドイツは
すばらしい」というもの。自虐趣味のある人間には心地よいのかもしれないが、
愛国主義者のボクには不向きだった。

その点、ドイツはシュトゥットガルト在住30年のマーン惠美はボク好みだ。
結論としては「日本人は世界一の楽園に住んでいる」ということなのだが、
双手を挙げて日本を礼讃しているわけではない。
《東京は魅力的だが、その風景は混沌としている。私たちは統一した景観をつくる
ということに関しては大失敗してしまったようだ》
こう落胆するが、
《これほど多くの人間が住みながら、これほど清潔で、これほど多くのことが
スムーズに機能する都市は、東京をおいて世界のどこにもない》
と、欧米の「ストック型社会」に対する「フロー型社会」のダイナミックな律動感
をしっかり評価している。

思想信条もボクと同じ。EUに対する悲観論もボクと同じ。
ヨーロッパは1つという〝夢〟から始まったEU。しかしその夢はことごとく破れ、
《EUは今や要塞だ。自分たちの富を囲い込み、
貧しい国の人々を寄せつけないための要塞である》
と悲しく断じている。
ああ、EUはついに排他主義と利己主義の集団に成り下がってしまったのか。

ところで、日本礼讃本のなかに、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』という
のがあるが、この本は期待外れだった。ただ「新幹線お掃除劇場」の章だけは面白い。

■『コーヒーの科学旦部幸博、講談社ブルーバックス)
「カフェ・バッハ」店主・田口護との共著『コーヒー おいしさの方程式』につづき、
旦部が総力を挙げて書きあげた力作だ。科学的見地からコーヒーを分析した本で、
これに優る本は、向こう100年くらい出ないのではないか。ただ難しすぎてボクみたいな
「文系人間」のカボチャ頭には荷が勝ちすぎるのも事実。それでも頑張って読了した。
おかげで頭の芯がいまだにジンジンする。さすが〝Mr. ブタンジオン先生〟の本である。
身体に変調をきたすくらい中身が濃い。

ご存じのように、コーヒーおたくのMr.ブタンジオン先生はネット上に『百珈苑BLOG』なる
サイトを開設していて、本ブログでもおなじみの帰山人の『珈琲漫考』と並称されるほど
の人気サイトに育っている。ボクみたいな〝非コーヒーおたく〟からすると、何が何だか
サッパリわからないサイトなのだが、コーヒーに関して〝くるくるパー度(コーヒー偏差値)
の高い人たちにとっては、感涙にむせび泣くほどに中身が濃いらしい。

中身がみっしり詰まっている分、熟読玩味するには少しばかりの忍耐と根性が要る。
知識なんかさほどなくても根性があればいい。困難に立ち向かう根性さえあれば
十分読み切れるし、おぼろげながらエッセンスもつかめる。が、読後、
しばらくは帯状疱疹並みの頭痛が残る。たぶん良書の証しなのだろう。


居眠り磐根 江戸双紙50 竹屋ノ渡(佐伯泰英、双葉文庫)
ようやく終わってくれそうな気配である。このシリーズはけっこう面白いものだから、
次から次へと読み進んだものだが、40巻くらいから息切れがしてきて、
(まだ続くのかよ……)
だんだんいやになってきた。それでも作者は「51巻目で幕にします」と宣言している
から、まあここまでつき合ったんだから、最後までお伴してやるか、とその後も
アマゾンで買い続けた。

そして正月に同時発売されたのが50巻目と51巻目。
しばらく本棚の上にほったらかしておいたが、
(そろそろ引導を渡してやるか……)
と手に取ったのがこの50巻目。けっこう面白い。
そして昨夜、最後の51巻目の半ばまで読み進んだ。

主人公の坂崎磐根は相変わらず強い。いや強すぎる感があって、
相対的に刺客の弱さがいつも際立ってしまうのだが、まあ、強い分には
こっちも安心して読めるから、精神衛生上はすこぶるよろしい。
また息子の空也が父を凌ぐほど強くなっている、というのも嬉しい。
雑賀者の霧子が好きなボクとしては、もっと彼女の活躍する場面をつくってほしい
ところだが、磐根の取り巻きはいかんせん多いものだから、まんべんなく活躍させる
というのもつらいところだろう。読んでるこっちはお気楽でいいが、作者としては骨身を
削るほどの難行苦行にちがいない。

全51巻のシリーズというのはかなり長い部類だと思うが、
よくまあここまで引っぱってきたものよ、と心底感心する。
しかし、いかんせん長すぎましたね。


←それぞれに読みごたえがありました






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