2010年5月10日月曜日

惚れたが因果か

夫婦で両国の江戸東京博物館へ行ってきた。特別展示『龍馬伝』を見るためだ。
NHKドラマ『龍馬伝』の人気(福山雅治人気といったほうがいいかも)はすさまじく、
今まで歴史ドラマにさほど興味を示さなかった女房までも、福山龍馬にはぞっこんで、
おかげで結婚26年目にして初めて共通の話題を持てるようになった。
福山龍馬サマサマである。

平日にもかかわらず、館内は客であふれ、老若男女を問わず、日本人がいかに
龍馬を好いちょるか、よ~くわかった。展示は龍馬の遺品や書簡集などが中心で、
よほどの歴史好きでなければ、地味で退屈極まりないものなのだけれど、
誰もみな熱心で、無学な僕などにはサッパリの、達筆で書かれたさまざまな書簡を
丁寧に目で追っていた。

いわゆる「歴女」と呼ばれる若い女性たちも「龍馬のことならぜ~んぶ識りたい」
とばかりに、難物の崩し書きを倦かずに眺めていた。正直、この光景には驚き、
感動もした。日本もまだ捨てたものではないぜよ。

何が面白いって、歴史を学ぶほど面白いものはない、とは僕の師匠・小林秀雄
の言葉だ。歴史といっても堅く考える必要などない。歴史学者ではないのだから、
小難しい史料を読む必要はないし、重箱の隅をつついたような新解釈をものにしよう
というのでもない。気に入った時代小説や歴史小説、雑学本の類を勝手気ままに
読み散らかすだけで十分なのだ。

僕の友人に歴女のはしりとも云えるA女史がいる。彼女は戊辰戦争の際、
朝敵とされた会津武士に肩入れするあまり、早乙女貢の長編小説『会津士魂』
全13冊をたちどころに読破してしまった。僕など、とてもそんな根性はない。
女は強い。惚れたら一途、なのである。

歴史好きの人間は話題が豊富だ。おしゃべりしていても飽きさせない。
A女史などはその典型で、ドラえもんのポケットみたいに、話題が縦横無尽、
いくらでも湧き出てくる。たとえ芸能ゴシップ話であっても、「彼は慶喜的な性格かな。
頭が良すぎて、いざとなると臆病になっちゃう……」などと、歴史上の人物に
仮託して話したりするから、どこかアカデミックな色彩を帯びてくる。
そして次から次へと話題が広がっていく。歴史好きは話し上手でもある。

龍馬が三味をつま弾きながら歌ったとされる端唄をひとつ。

   ♪何をくよくよ川ばた柳 水の流れを見て暮らす 

さて、福山龍馬もますます快調だが、龍馬を支えた京・寺田屋の女将、お登勢
を筋肉マッチョのヌードで話題となった草刈民代が演じるという。A女史は
この配役に「イメージが壊れる」と大反対、うちの女房も『Shall we ダンス?』以来、
大の草刈り嫌い(大根のうえにいじわるそうだから、がその理由)になっているから、
もちろん不同意の大ブーイング。許しがたい暴挙だ、と息巻いている。
わけわかんないけど、ああ、女性ファン、恐るべし!

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