2015年3月11日水曜日

亡き父母(ちちはは)のお導き

9日は亡父の祥月命日。毎年墓参りは欠かさないが、今年はちょうど23回忌に当たるので、
兄弟全員が集まり、簡単な食事会をしようということになった。姉の発案である。

男兄弟3人は正直、仲があまりよくない。原因はよく分からないが、次男坊の私は
兄と弟の性格に少し問題があるのではないか、と勝手に思っている。兄は弟2人を
出来損ないのロクデナシと思っているし、私は兄と弟のことをアンポンタンと思っている。
また末っ子の弟は上の兄2人を度し難い〝くるくるぱー〟と思っているのだから、
もうどうしようもない。この3人をなんとかつなぎとめているのが紅一点の姉だ。
姉は絵に描いたようなお節介おばさんだが、心根が底抜けにやさしく、
それなりに皆から慕われている。

兄弟仲はホメられたものじゃないが、それぞれの嫁さんたちとはうまくいっている。
特に実家の嫂(あによめ)には心から感謝している。母のことを死ぬまで面倒見てくれて、
兄弟が実家に帰れば、いやな顔ひとつ見せず歓待してくれる。なかなかできることじゃない。
兄は出来損ないのコンコンチキだが、すばらしい嫁さんをもらったという一点だけは
評価できる。私も同じようなことをいわれているから、実によくわかるのだ(笑)。

23回忌というが、私は「年忌」などというものを少しも信じてはいない。
坊主丸儲け」にも書いたが、年忌の実体は、バラモン教や儒教、そして神道などとの
チャンポンで、仏教とは何の関係もないのだ。

日本人の信仰心というのは非論理的といわれる。もっとも宗教そのものが論理的では
ないのだが、それなりの勝手な理屈はつけてある。戦後、GHQが日本人の意識調査を
実施して、その結果に驚いたことがある。日本人は進化論を認めていながら、
天皇が〝現人神(あらひとがみ)〟であると信じていたからだ。

そんな例だったらいくらでもある。たとえば人間は死んだらどこへ行くのか。
「天国にいるお父さんが見守ってくれている……」
日本人はよくこんなふうに言う。しかし天国というのはキリスト教の考え方であって、
神に許されたキリスト教徒の人間だけが行くところだ。ならば「極楽浄土」かというと、
そういうわけでもない。あれは阿弥陀如来の浄土のことであって、如来それぞれの
浄土は異なるのである。たとえば薬師如来の浄土は「薬師瑠璃光浄土」というところだが、
大日如来の浄土は何と呼ぶのか知らない。

いずれにしろ浄土へ行けるのは〝南無阿弥陀仏〟と念仏を唱える人たちだけで、
天台宗の私などは浄土へ行けないかもしれないし、ひょっとすると入れてもらえる
かもしれない。また〝南無妙法蓮華経〟と題目を唱える日蓮宗の宗徒は、
これまた死ぬとどこへ行くのかさっぱりわからない。いかんせん行って帰ってきた人が
いないので、実態がよく分からないし、日本人はあまり深く考えることもしないのだ。

いい加減といえばいい加減で、時には「13日の金曜日」は不吉だ、なんて言ったりする。
あるいは仏滅とか大安を気にしたりもする。現に6月に挙式を迎える私の娘も、仏滅は
避け大安吉日を選んでいる。ホンモノの仏教徒だったら、仏滅などは信じないはずだ。
あれはどっちかというと「陰陽道(おんみょうどう」の考えに近いもので、仏教とはまるで
関係ないのである。「仏」という字が入っているが、昔は「物滅」と書いたもので、
仏陀(お釈迦さま)が入滅した日という意ではない。近年になってたまたま「仏」という字が
当てられただけなのだ。だから、こうした迷信・俗信はまったく気にする必要はないのである。

この日、兄弟仲はなぜかとてもよかった。兄は相変わらず口がわるく、
人をけなすことで笑いを取るという、もっとも拙劣なるユーモア精神を発揮していたが、
私はいつものように完全無視を決め込んだ。弟とは十数年ぶりに口をきいた。
数十年ぶりに笑顔も見た。
(へーえ、こいつも笑うことがあるんだ……)
実に何とも奇妙な兄弟である。

この場の雰囲気を和らげていたのは、実家の2歳児だった。
甥っ子の長女で、実に可愛いらしい。最初はふだん見たことのないおじさんやおばさんが
いきなり顔を出したので、いくぶん怯え警戒心を露わにしていたが、30分ほど観察して、
人畜無害の人間だと分かったらしく、いつもの地なのか、歌ったり踊ったりと、
狂ったようにハシャギまくった。そこにまっ黒のフレンチブルドッグの「イクラちゃん」が
加わったものだから、もう上よ下よの大騒ぎ。リビングルームは爆笑の渦に包まれた。

Hちゃんと不細工な顔のイクラちゃん、アリガトね。
Hちゃんとイクラのおかげで、兄弟同士、久しぶりに笑い合うことができました。
兄と弟は「アホ・ボケ・カス」の三拍子揃ったアンポンタンと思っていたけど、
あれでも血の通った人間なのだ、ということが分かって、ホッとしましたよ。
これからはできるだけ仲良くつき合っていけたらいいな、と心より願っています。
あ~あ、男ってやつはほんとうにバカだねえ。




←天使のような天然パーマのHちゃん。
ズレたサングラスがよく似合ってるよ。












※追記
3.11 読売新聞で紹介されていた詩を転載させていただく。

タイトルは『最後だとわかっていたなら


2 件のコメント:

田舎者 さんのコメント...

嶋中労さま

こんばんは!

一句が好きな暗い田舎者です。


教えていただいた詩、心に響きます。そして考えさせられます。
14日が母校の卒業式で来賓として出席させて頂くのですが
卒業の授業として母校に詩のコピーを置いてきます。

田舎者にも忘れられないお母ちゃんの一句があります。
『二人しかいない姉弟だから仲よくね』


ありがとうございました。



ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

暗~い田舎者さま

おはようございます。
どういうわけか3:30に目が覚めちゃいました。
最近、眠りが浅いんです。年のせいでしょうかね。

昨日は相棒のNICKさんと近所のジャズ喫茶へ
行きました。「海」という店名で、昭和27年、
すなわちボクが生まれた年に創業した店です。

早大教授でエッセイスト、ジャズピアニスト
でもあるマイク・モラスキー氏によると、
いまや日本で一番古いジャズ喫茶なのだそう
です。

いろいろ聴きましたが、チェット・ベイカーの
ボーカルが心に響きましたね。詩でも歌、演奏
でも心に響くものと響かないものがあります。
若い頃にはそれほど心動かされなかった曲
でも、人生経験を重ねると、
(なかなかいい演奏じゃないか……)
と、そのよさを再確認することがあります。

あの詩は若い生徒たちにはまだピンとこない
かもしれませんが、十数年後、誰かの心を
揺さぶるかもしれませんね。

田舎者さんはお母ちゃん思いのやさしい
男なんですね。姉ちゃんと仲良くしてください。