2015年3月1日日曜日

迷える仔羊は餓狼のエサにしよう

イスラム過激派の手で日本人人質2人が無惨にも殺された事件に関して、
1匹と99匹の羊」の話がしばしば引用されている。手元にある『新約』のマタイ伝や
ルカ伝にはこうある。
《汝らいかに思うか。100匹の羊を持てる人あらんに、もしその1匹迷わば、
99匹を山に残しおき、行きて迷えるものを尋ねぬか。もしこれを見出さば、
まことに汝らに告ぐ。迷わぬ99匹に勝りてこの1匹を喜ばん。かくのごとく、
この小さき者の1人亡ぶるは、天にいます汝らの父の御心にあらず》(マタイ伝第18章)

つまり、羊飼いは99匹の羊を残してでも迷える1匹の羊を探しに行かなくてはならない、
それが神の御心に叶った行為なのですよ、とイエスは言っている。「民間軍事会社経営」
と名乗る湯川某を救うべく、フリージャーナリストの後藤健二氏は、勇躍シリアへ
乗り込んでいった。後藤氏はプロテスタント系「日本基督教団」の熱心な信者で、
さながら迷える仔羊(湯川氏)を助け出さなくてはいけない、と強い使命感に衝き動かされ
たにちがいない。

ボクはこうした熱き信仰心と義侠心を否定するつもりはないが、
ただ血気にはやるだけの〝匹夫の勇〟は迷惑千万なんだよな
と内心思っている。「何が起こっても責任は私自身にあります」と潔いことを言ったけど、
結果的には国政をマヒさせ、国益を大きく損なってしまった。最期まで見苦しいマネをせず、
従容(しょうよう)と死んでいった後藤氏を「武士道精神の誉れ」などと持ち上げるムキもあるが、
あれだけ迷惑をかけといて、武士道精神のホマレはないでしょ。
なにとち狂ったこと言ってんだよ、とボヤきたくもなる。

ダッカ日航機ハイジャック事件(1977)では、時の福田赳夫総理は、
1人の命は地球より重い》という〝迷文句〟を残し、テロ集団・日本赤軍に対し、
身代金600万ドルを支払い、獄中メンバーの引き渡しにも応じてしまった。
とうとうテロリストと取引してしまったのだ。

一方、今回の安倍総理の対応はどうだったか。
裏でどんな取引があったか知らないが、阿倍は迷える仔羊1匹を犠牲にし、
残りの99匹を救うことを選んだ。つまり「心情倫理」より政治家の取るべき
「責任倫理」を選択したのである。

安倍総理の苦渋の決断に対して、例のごとく朝日新聞を初めとする進歩的文化人や
左翼反日メディアは「国家は自国民を保護する義務がある」などときびしく非難した。
しかしねえ、この海には人喰い鮫がウヨウヨしてるよと再三警告しているのに、
進んで飛び込んでしまう輩(やから)をシャカリキになって守ってやる必要があるのかね。

その後、杉本某とかいう目立ちがり屋のフリーカメラマンがシリアへ渡航しようとして
外務省から旅券を強制的に取りあげられてしまった。シリア行きを阻止されたこの男は、
憲法21条の「表現の自由」と同22条の「居住・移転の自由」に抵触するではないか、
とメディアの前で咆えまくった。まったく、どいつもこいつも、人の迷惑も顧みず、
勝手な理屈をほざきやがって……。

ボクは思うのだ。朝日の愛読者や進歩的文化人を気取るお調子者たち、
それに人道主義や平和主義を掲げる民主党や社民党などの坊ちゃん・嬢ちゃんは、
きっと得意の正義を振りかざし、
「99匹を犠牲にしてでも迷える1匹を救い出そうとする」だろうと。
ああ、なんと気高くも美しい精神なのだろう!

北朝鮮を「地上の楽園」と持ちあげ、中国には「ハエが一匹もいない」とヨイショしていた
朝日のシンパなら、そうした甘っちょろい「非政治的な決断」を下してしまうのではないか。
ボクはそのことを心底憂えている。
迷える1匹の仔羊を救い出そうとするのは文学や宗教の世界であって、
非情なる政治の世界とは次元が違うのである。

何度でも言う。
朝日の社説と反対のことをやっていれば日本の平和と安全は保てる》と。
現に戦後70年間、そうやって日本の安寧は保たれてきた。これは歴史的事実である。
そしてまたこの事実は、もはや〝不変の真理〟ではないのか、
と不肖私めは愚考するのであります。




←イエスの言いたいことは分かるんだけどねぇ








2 件のコメント:

田舎者 さんのコメント...

嶋中労さま

おはようございます。


自由と権利を何かについて振り回す人が嫌いな田舎者です。

たかが50年の人生で何が分かるのかと言われそうですが、自由と権利を口癖の
ように言う人はロクな死にかたをしないのではないでしょうか。

子だからもらう(相続)権利がある。組合員たから言う権利がある。そんなの俺の
自由だろう。こんな言葉を吐かれると逆切れしてしまいます。

ジャーナリストだから伝えたいという気持ちが有るのは分かりますが、その奥には
一旗揚げるという気持ちが観えてきます。誰にしても多かれ少なかれ有るのですが
国を播きこんでの騒ぎになる行動は正しいはずがありません。

本物の勇気と行動とは、マララ・ユスフザイさんが通っていた中学校から帰宅する
さいのスクールバスでテロリストの襲撃を受けた際の自らの言葉。I Am Malala.
ではないでしょうか。

スポンサーに支えられている日本のマスメディアでは何が本当なのか分かりません。
NHKですらそうなのですから。

それにしても誰が世界を振り回しているのだろうか。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

逆ギレが得意の田舎者様

後藤氏に一旗揚げたい、という気持ちが
あったことはたしかでしょうね。
というより、ひと儲けしたかった。

某雑誌によると、彼の撮った映像は
「10分間で300万円」の価値があったそうです。これまた某テレビ局から、
「イスラム国の内側の映像が欲しいな」
と匂わされていたようで、湯川氏救出以外にも、金を稼ぎに行ったという側面もあったようです。

契約書はありません。何かトラブったときにテレビ局の責任が問われますので、そういう証拠物件は残さない。前払い金なしの
出来高払いが業界のルールだそうです。

また彼は1日10万円の誘拐保険を掛けていました。ロイズ社など欧米にはこの種の
保険があって、最大補償額は500万ドル
(約5億9000万円)です。

たぶん億単位の補償金が後藤氏の遺族に
支払われたのではないでしょうか。

メディアは「正義感」だとか「勇気」だとか、きれい事ばかり言ってますが、裏に回れば俗臭芬々たる現実がある。

人間なんて、だいたいこんなもんでしょ。