2011年2月14日月曜日

ホタテの缶詰

部屋に缶詰になって原稿を書きまくっている、
というと、ホテルの一室に閉じこめられ悪戦苦闘している
人気作家みたいだが、今のボクがまさしく
その「……みたい」なのである。

今日半日で、原稿用紙30枚分を書きあげた。
自分としてはかなりのスピードだ。
内容はともかく、気分が乗ってくるとスラスラ書ける。
これも訓練のたまものか。

同じ稼業の女房は、キーボードを両の指で打つ。
ピアノをやっていたからなのか、左右の指が自在に動く。
ボクはというと、右手の指が9割で、左が1割ってとこか。
ほとんど右手で打つので、手首が腱鞘炎みたいになって
ときどき痛みが走る。

連続して泳いでいると、スイマーズ・ハイというような
高揚感に襲われることがある、と以前書いた。
原稿を書いていても似たような気分になることがあって、
たいてい疲れきっているときにそれは起こる。

こんなときは、天才になったような気分で、
何でも書けそうな気がするものだが、
出来上がりを読むと、テニヲハが怪しくて
心底ガッカリする。

若い頃は酒を飲みながら書いたこともあった。
が、この手のものは妙にはしゃぎすぎていて、
読めたものではない。

文章の極意は、などというとずいぶん偉そうだが、
なに簡単なことだ。平易でわかりやすい文章を
心がけるだけでいい。

気負いは禁物。難解な言葉もダメ。
素人や学者先生が気負って書いたものは、
みんなそのたぐいなので、読めばすぐわかる。

人間も同じ。一見、鋭利そのもの、といった人は
実は大したことはない。愚物のごとくホワーンとしていて、
つかみどころのないようなのが一番恐ろしい。
シンプルなものがいちばん深い。







6 件のコメント:

小野ちゅん さんのコメント...

嶋中楼さま

で、なんでホタテなん?


     小野ちゅん

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

小野ちゅん様

お久しぶり。
ホタテは意味ないの。
たまたま頭に浮かんだんだけど、
たぶん食べたかったんじゃないかしら。
食い意地張ってるから。

今日も缶詰、明日も缶詰。
女房なんか1年365日、
ずっと缶詰状態。

働けど働けど
なおわが暮らし ラクにならざり。
じっと(腱鞘炎の)右手を見る。
ジーッ……

匿名 さんのコメント...

"文章の極意は、簡単なことだ。平易でわかりやすい文章を心がけるだけでいい" 御説良く判ります。でもやるとなると難しいですね。どうしても自分を売りたくなって美辞・麗句に流れやすく、結果、焦点がぼやいた文章になってしまいます。誰かが書いていました「世の中に形容詞・副詞を吸い取ってくれる不思議な壷が無いものか。全部吸い取って呉れたらスッキリした文章が出来るのに」

アインシュタイン博士が言ったそうです。「自分の仕事で一番難しい部分は、誰にでも解って貰える文章で説明を書く事だ」
こんな偉い人が苦労されていたのならぼんくら頭の我が苦労するのは当たり前かな~。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様
ボクもそのふしぎな壺の話、
読んだことあります。
あれ、何の本に書いてあったんだけな?

ちょっと思い出せない。
でも言ってることはたしかなことで、
素人ほど形容詞、副詞で言葉を飾ってしまう。
「足し算」の発想なんですね。

でも名文家というのは「引き算」の世界で、
どれだけ言葉を削るかに心を砕く。

言うは易しで、これがなかなか難しい。
量をこなすしか道はなさそうです。

 

匿名 さんのコメント...

不思議な壷の話の作者は開口健ではありませんか?不遜ながら彼の作品「書斎のポ・ト・フ」の前書きを読み返し、不思議な壷に御世話になりそうな個所が何いのか見たのですが唯多だ唯多だ脱帽でした。

”ポ・ト・フ  ポ・ト・フーとも。フランス料理の一つ。レストランの御馳走というよりはざっくばらんのごった煮の妙味を楽しむ家庭料理。脛肉の髄からとったスープで煮るが、バラ肉、塩豚、鶏などにポロネギ、ニンジン、タマネギ,カブラなど、ありあわせの
材料をかたっぱしからほうりこんで4時間か
5時間ごとごと。むつかしい処方もなく、定式もなく、儀式もなく、季節もまた、ない。
この一冊の本の狙いはそのあたりにある。果してダシがよくしみておりますか、どうですか。食後の枕としても、どうぞ。よしなに。

不思議な壷よさようならでしたね。開口さん
ごめんなさい!












  

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様
ボクの読んだのは開高さんの
本ではないですね。
別の人です。そのうち思い出すでしょう。

ポトフはときどきボクも作ります。
ボクが作ると闇鍋のように
なってしまいます。

棚卸しみたいに、なんでもかんでも
ぶち込んでしまうので、
なんだかよく分からない鍋に
なってしまうのです。

昨夜も泊まっているフランス人の
Myrtilleに、国籍不明の鍋料理
をごちそうしてやりました。

そういえば彼女、トーフばかり食べてたな。