2010年11月23日火曜日

B-612番の星

ボクには40年来の愛読書がある。
サン=テグジュペリの『星の王子さま』である。
なんだ童話か、などと呆れないでほしい。
読んだ人は先刻承知しているはずだが、
この本の中には、さりげない会話のはしばしに、
人生の機微にふれるようなessentialなコトバが
いっぱい散りばめられている。

僕はこの本に惚れ込むあまり、日本語訳の他に
英訳、独訳、伊訳(女房用です)、そしてもちろん仏語(こっちも女房用)
の原書も買い込んでしまった。フランス語で音読したレコードも持っている。

僕のお気に入りはキャサリン・ウッズの英訳本で、
訳の美しさにはぞっこん惚れ込んでいる。現代風のリチャード・ハワード訳も
持ってはいるが、やはり格調の高さはウッズ訳のほうに軍配が上がるだろう。

最近また読み返してみたのだが、やはり
(いい本だなァ……)との思いを深くした。
自分の星に置いてきぼりにしてきてしまった
一輪のバラの花。その花に寄せる王子の思慕の念が、
やけに切々と胸に響くのだ。

My flower is ephemeral――僕の花はこわれやすくはかない。
身を守る術といえば、4つのトゲしか持っていない。それなのに、
彼女をひとりぽっちにしたまま僕は旅立ってしまった……。

What is essential is invisible to the eye.
王子と友だちになったキツネが吐く科白もいい。
ほんとうに大切なものは、目に見えないものなんだ――。

100ページそこそこの、たった$1.25のペーパーバック。
無線綴じの本はすでにバラバラに外れ、
1枚1枚セロテープで留めてある。
でも、なぜか愛着があって捨てられない。

心を揺さぶられる本なんて、そうはないけれど、
The Little Prince』はそんな本のひとつである。




←この本を何度読み返したか。
英語版は学生時代の家庭教師の
教材にも使った。

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