2013年2月7日木曜日

鼻曲がり貴婦人

体罰や暴力が学校やスポーツの現場で日常的におこなわれ、
女性までもがその被害にあっているという話になると、
欧米かぶれの似非インテリたちは、鬼の首でも取ったみたいに、
「日本はやっぱ遅れてるな。今こそ女性上位の欧米諸国に学ぶべきだ」
などとしゃしゃり出てくる。おまけに、よせばいいのに騎士道精神やレディファースト
なんぞを古い抽斗から引っ張り出してくるものだから、こっちは、
(おいおい、そんなものをマジメに信じているのかよ)
と、ついその軽忽さをせせら嗤ってしまうのだ。

欧米人はドアを先に開けてくれたり、エレベーターにも女性を優先的に乗せて
くれたりするので、長い間亭主の後ろからトボトボと付き従ってきた日本の女たちは
「キャーッ、素敵!」とばかりに、つい舞い上がってしまうようだが、
あんなもの女性上位でも何でもない。

レディファーストとか騎士道精神というのはあくまで「建前」の文化で、
実際は力の強い者が勝つという男性優位の考え(machismoマチスモ、男性優位主義)
が欧米文化の「本音」なのだ。

騎士道精神の本質は、力の強い者が弱い者を保護するという、いわば正義の
パフォーマンスを公衆の面前で示すためのものだ。それは厳しい男社会の中で
男が勝ち抜いていくために演ずる一種の〝方便〟と言っていい。

DV(ドメスティック・ヴァイオレンス)の本家本元は欧米で、今でもDV問題はかなり深刻だ。
なにしろ外面のいい紳士が、家に帰ると女房やこどもを殴り、時には殺してしまうのだから
とんだレディファーストであり騎士道精神なのである。日本の女たちはその実態を知らない
から、欧米の男となると誰もみな慈悲深いジェントルマンだと勘違いしてしまう。

「鼻曲がり」というと日本では鮭のことで、「南部鼻曲がり」なんていう呼び方もあるが、
中世ヨーロッパにもその鼻曲がりはいっぱいいた。ところがこっちの鼻曲がりは鮭ではなく、
文字どおり騎士の夫人たちなのだから呆れてしまう。
歴史書のインデックスなどには〝鼻曲がり貴婦人〟という項目があるから、
おヒマな人は調べてみたらいい。

どうして鼻が曲がっているかというと、騎士である亭主にしょっちゅうぶん殴られて
いたからだ。中世の騎士たちはなぜか怒りっぽく(野菜不足で壊血病患者が多く、
そのため怒りっぽいという説もある)、貴婦人への献身を賛美される割には、
裏で暴力をふるう男が多かった。

で、逆に優しい騎士たちが登場する『騎士道物語』のような宮廷文学が、
虐待されている妻たちの慰みものとしてもてはやされたのである。
(ああ、あんな心優しい騎士が夫だったら、どんなにか素敵でしょう……)

二言目には〝人権〟を持ち出し、女性優位社会を喧伝する欧米の先進諸国。
が、裏に回ると鼻曲がり貴婦人の伝統であるマチスモをしっかり受け継いでいるのだから、
彼らが偉っらそうに唱道する「正義」だとか「きれいごと」を真に受けたりしてはいけないのだ。

それにしても、インドの「サティ」といい、イスラム社会の女性蔑視といい、
21世紀になっても女性が真に解放されないのはまことに嘆かわしい。
うちなんか解放されすぎて、逆にたった一人のオノコが孤城落日の思いを噛みしめている。
そのうち〝つむじ曲がり〟に加えて〝鼻曲がり〟にもされてしまうのではないかと、
恐怖におののく毎日を送っている。




 ←こっちは南部鼻曲がりの鮭。

4 件のコメント:

Nick's Bar さんのコメント...

ROUさん、

こんにちは。

直接関連があるかどうか、いささか疑問なんではありますが・・・・・・

明治維新のころ諭吉翁が唱えた「入欧脱亜」の気概は、たぶんその真意とは別の方向で「文明開化」として体現されたのではないか。

さらに、大東亜戦争終結(敗戦)以降、お気楽極楽な米国の表層のみが流れ込んできて今の惨憺たる状況になってるんじゃないかと。

で、差別の問題なんですが、どうもその基準をありがたがって、無理やり押し付けようとしている気がしないこともない、というのが本音です。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

英語の達人であらせられるNICKさんに質問。
欧米では男女を並べる時、husband&wifeとか
シーザーとクレオパトラ、ロミオ&ジュリエットというように男を先に言うのが当たり前になっています。

日本は逆に「お染め・久松」とか「お夏・清十郎」と女性を先に立てます。

レディファーストの国がどうして男が先
なんですか?
そのいわれというか理由が分かったら
教えてください。

ずうずうしい女 さんのコメント...

労様こんばんは

確かに外国人にレディーファーストを
してもらうと、気分よくなります。

またその男性が、別の女性のためにも
気を使っているのを見ると、ほのぼのします。

労様またどこか美味しいお店連れて行って
下さい。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

そば喰い女様

ボクはsamuraiの子孫ですから、
女房の鼻をひん曲げるなんてことはしません。

ladyに対してはやさしいのです。
ただしladyでない人はその限りではありません。

いつまでも清く正しく美しく(これって
宝塚歌劇団の遺訓だっけ)を心がけてください。