2012年4月1日日曜日

ご飯をよそう

韓国に行って驚くのは、彼らが器を手に持って食べないことだ。
左手に持って食べるのははしたない行為とされ、
器を持たず前かがみになり、スプーンか箸でつまんでそのまま口に運ぶ。

この〝正統派〟の韓国式マナーが、海一つ隔てると〝犬食い〟と
呼ばれてしまうのだから、韓国人にしてみればなんとも不本意なことだろう。
文化の違いというのはおそろしいものだ。

また彼の国では女性が立て膝をしながら食事をしたりするが、
これなど日本の礼法からするととんでもない不作法になる。
ことほどさように異文化理解というものは難しく、
誤解の温床にもなりやすいのである。

ボクたちは子供の頃から「お茶碗を持つ手は左、お箸は右」と躾けられた。
こうやって右と左を身ごなしで覚えたというのもおもしろいが、
なにより茶碗をきちんと持って食べると、背筋も伸びて美しかった。

左手を使わずに食べるとどうしても猫背になってしまう。
すると母や祖母から「犬食いはダメ!」と叱られ、
兄などは背中に物差しを突っ込まれヒーヒー言っていた。

「○△□! 卓袱台を拭いてちょうだい。ついでにご飯もよそってね」
母はこう言ってボクたちをよくこき使った。←大袈裟だろ
「ご飯をよそう」というのは「ご飯を(茶碗に)装う」ということ。
そして両の手で懐くように持つ。

なぜそんなにご飯を大切に扱ったかというと、お米は一粒たりとも粗末にできない
貴重なものだったからだ。それにお米には稲の神様が宿っている。

また茶碗を手に持つことで、日本人のユニークな美意識が育まれたともいわれている。
器に直に手でふれたり、唇にふれることで、ものの質感に対する感性が鋭く磨かれた。
磁器、陶器、そして漆器。それぞれの素材の違いを深く観賞できるのも
日本人が持つ美意識のなせる業だろう。

今はソフトクリームを舐めながら、あるいはハンバーガーを食べながら歩く行為が
ごくふつうに行われているが、昔は立ってものを食べるなんてことは決してしなかった。
そんなことをすると「座って食べなさい!」とすかさず叱声が飛んできた。

ボクも立って食べたり歩きながら食べることには抵抗を感じる世代だが、
そう言いながら駅前の立ち食いそば屋でズルズルやっているのだから世話はない。

現代人の不作法をすべてグローバリズムのせいにするつもりはないけれど、
日本人が育んできた食事の作法と美しい感性は守っていきたいものである。



←韓国人は食事中に膝を立てる。




4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

勞さん:

食事の作法は国々によって異なるのでしょうが
どの国でも”駄目”と叱られるのが”ペチャ・
ペチャ””クチャ・クチャ”と音を発てることでしょうね?

子供の頃兄貴に散々叱られ、直したつもりなのですが、家内に言わせると愚輩も若干その気があるようです(”入れ歯の具合が宜しくないからだ”と自己弁護してます)。が、他人の食べ方が気になります。昔会社の寮の食堂で”ペチャ・クチャ”とやられて飯が不味くなり、不愉快なおもいを随分経験しました。守衛のおじさんが一口ごとに舌鼓されるのには閉口でした。
怒鳴りつける事も出来ず、ただただ横の席に
来ないよう祈ったのみでした。

音を発てると言えばスープが難問の方はかなりおられると思いますが、ご参考の為に、”すする”のではなく”放り込め”と教えられたことがあります。それ以来スープだけは音をたてずに食べる事が出来るようになりました。(閑話休題:スープはEat soupが正しく、Drink soupは誤りとも教えられました)。

どんな美人でも、ペチャ・クチャ、ズーズーでは同席もちょっと考えものです - 呼ばれる
はずもありませんが。。。。。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様

ボクにも同じような経験があります。

ヨーロッパのレストラン取材をしていた頃、
一緒のチームだったカメラマンが
食事中に激しく「クチャクチャ」やるのです。

その音は尋常なものではなく、
他のテーブルの客たちは
刺すような視線を浴びせかけてきました。

ある晩、通訳の女性がボクの部屋に来て、
「あの音には堪えられません」と訴えてきました。翌日、勇を鼓してカメラマンに
そのことをやんわり伝えました。

カメラマンはよほどショックだったようで、
その後の彼との関係はギクシャクしたものに
なってしまいました。過去に、
彼の欠点を指摘する人はいなかったのです。

(余計なことを言ってしまった……)
ボクはちょっぴり後悔しましたが、
チームリーダーとしてはやむを得ない行為でした。

ボクと仲の良かったこの友人は、
これを機にぼくの前から去っていきました。
すべて余計なことを言ってしまったからです。というより、言い方がまずかったからです。

ヒトの欠点を指摘するのは簡単ですが、
相手を傷つけずに理解させるのは至難の業です。

スペインでのこの出来事は、
今でもボクの心の傷になっています。

匿名 さんのコメント...

勞さん

音を発てて食べる人に間接に注意を促すやり方でこんな経験があります。

某自動車メーカーのブラッセル連絡事務所を
訪れ会食した際に随行した我が専務のマナーが宜しくなかったのです。連絡事務所の方は同専務に直接注意せず私に向かって”XXXさん音を気を付けてね”とやんわり一言して、パチンとウインクを一つ呉れました。それからは食卓が静かになりました。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様

いい話ですね。

ボクはまだ若かったのか、
こうした機転というか
余裕がありませんでした。

相手のメンツを保ちながら、
さりげなく注意をうながす。

なかなかできない芸当ですが、
そのレベルまでなんとか到達したいものですね。