2012年3月27日火曜日

300÷1500=忍耐

3月25日(日)、ヨイトマケ娘の長女に誘われ、家族揃って映画を観に行った。
場所は六本木瀬里奈の裏にあるシネマート六本木というミニシアター。
東日本大震災を扱ったドキュメンタリー映画で、
題名は『PRAY FOR JAPAN~心を一つに~』だ。
監督はアメリカ人のStu Levyスチュウ・リービーである。

映画は「家族」「ボランティア」「避難所」「学校」という4つの視点からこの悲劇を追い、
家を失い、家族を失い、生きる望みさえ失った被災者たちが、
悲しみの淵から立ち直り、前向きに生きてゆく様子が丹念に描かれている。

18歳の伊藤健人は家を失っただけでなく、祖父母、母、まだ5歳だった末の弟リツまで
津波に持っていかれてしまった。大切な家族を失った喪失感と悲しみでウツ状態に
陥ってしまう健人。ある日、自宅のあった場所でふと目にしたのが泥だらけの鯉のぼりだった。

(そういえばリツが「お兄ちゃん、鯉のぼりを空いっぱいに揚げてね」って言ってたっけ……)
健人は八方手を尽くして小さな鯉のぼりをかき集め、5月5日の「こどもの日」に
天国のリツに届けとばかりに空高くコイを泳がせる。その下で響く和太鼓の激しい調べ。
バチを握り一心不乱に叩くのは、小さな弟に心を寄せる長男の健人だ……。

ある避難所には3日間飲まず食わずが1500人。
あるのは4本の飲料水のペットボトルだけだった。
貴重な水は年寄りや衰弱している人たちに飲ませ、他はガマン。

ほどなく300個のオニギリが届くが、この数では皆に公平に渡らない。
「せめて1個のオニギリを半分に分け、皆で食べられるようになるまで待とう」
リーダーたちの出した結論はそれだった。
どこまでも公平を重んじる精神と忍耐力。東北人はほんとうに強い。

また1500人分の食糧を積み込み、遠く名古屋から駆けつけたパキスタン人の
男たちもいた。「被災者の皆さんに温かい食事を食べさせてあげたい」
その一心で4週間も泊まり込み、カレーやナンを笑顔でふるまった。
「困っているときはお互いさま。国も人種も宗教も関係ないです」
なんとも泣かせやがる。

ボクの真後ろの席では、堪らずオッサンがすすり泣き。
いや、館内のあちこちで鼻水をすする音が。
(まいったな……こういうの、苦手なんだよな)

最近ハマっている社会経済学者の佐伯啓思は、『反・幸福論』の中で、
《やたら「がんばれニッポン、がんばれトウホク」がめだち……(中略)
にわかづくりのナショナリズムが噴出している》などと書いているが、
この日ばかりはにわかづくりの「絆」という名のぬるま湯に
どっぷり浸かってきた。(やっぱ絆はいいもんだな……シミジミ)←この変節漢め!

帰りは池袋で別れ、ひとり酒屋で燃料を調達した。
ワイン3本、紹興酒1本、老酒1本、バーボンウイスキー1本の計6本。
ずしりと重かったが、足取りは軽かった。
涙に暮れた日は、酒でも飲まなきゃやってらんねェよ。



4 件のコメント:

Nick's Bar さんのコメント...

ROUさん、

こんにちは。


昨晩は一時的に水不足を経験されたやに聞き及んでおります。某所からその情報を入手したので間髪を入れず、万一にも不便のある際には拙宅を使っていただこうかと電話をしたのですが、凄まじい雑音に阻まれ連絡が取れませんでした。もう少ししつこく掛け続ければよかったかと反省しております。

いずれにせよ大事に至らず御同慶の至りでございます。

さて、「俄か絆」であろうとなかろうと、やはり「情けは人のためならず」の気心はこの島国に短期ではなく住まいする人には、それと気づかぬうちに醸成されているものだと感じております。

佐伯氏も資本主義の飽くなき欲望の成れの果ては「御破算で願いましては」的なカタストロフィーによるリセットくらいしかないとおっしゃられていますから、その中でどう再生するかという意味では、「にわかづくりのナショナリズム」を完全に否定されているとは思いません。

しかし、しこたま御購入された由。御身の為に私が代わって消費に貢献申し上げたいと存じます。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

昨夜はありがとう。断水したのは
H~K棟で、ボクのところは大丈夫でした。
電話があったときは、あのけたたましい
緊急放送が入っていたときで、
ガーガーピーピーとまったく聴き取れないので、あきらめました。ごめんなさい。

こんど断水したときは
わが家全員でNICKさんちにおじゃまし、
トイレにどっさり置き土産をしていく
ことにします。
これがホントの〝くさい仲〟なんちゃって。

なお、おちゃけのほうはご心配なく。
NICKさんのお口に合うような高級酒
じゃございませんので、
安酒専門のわが胃袋に処分してもらいます。

たしかに「情けは人の為ならず」
ということはいえるな。
ボクもせいぜい陰徳を積むことにしますよ。
困ったときには、よろしくたのみまっせ。

朗 さんのコメント...

スチュアート・リービー監督? 彼はTOKYO POP(日本の漫画を右開き=日本式でアメリカに紹介し、アメリカに日本マンガブームを起こした会社。数年前にほぼ倒産したはず)の創業者ではないですか。映画をやっているとはきいていたけど、震災のノンフィクションフィルムを作っていたことに驚きました。僕も観てみたいです。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

朗様

あの朗さんなら、お久しぶり。

リービー監督は震災時、東京に滞在していたらしく、震災後すぐに現地に駆けつけボランティア活動を始めたといいます。

そして現地の被災者たちに、
「ぜひとも映画に撮ってくれ」とたのまれ、
フィルムを回したそうです。

六本木での上映は大々的な公開を
前にした限定ロードショーで、
本番はこれからと聞いてます。

興味がありましたらご覧になってください。